3日も休んでしまった!!

 最近、ブログの更新頻度が減ってしまっている蔵間マリコです。
 大分遅れてしまいましたが、本日更新しますよ~。貧乏高校生の夏目大和とネコ耳宇宙人のデュタ、ミミとミューナとの共同生活を書いたオリジナルのSFファンタジーライトノベル『彼女たちの極秘事項(トップシークレット)』、略してカノゴクを。
 すいません、日曜日に更新することが出来なくて、そして平日なのであまり話すことが出来なくて。もうとにかく今日は今回の更新内容を掲載して、後書きも簡潔に済ませます。重ね重ねスミマセンでした!!
 というわけで、前置きはこれぐらいにして、そろそろ本編へ入らせてもらいます。稚拙で読みづらい文章かもしれませんが、読んでくれると嬉しいし、感想を書いてくれると非常に有り難いです。
 それでは、今回のカノゴクをどうぞ!!

第20話 ある夏の物語(3)

 クルスさんのおかげで仕事が無事終えた。
 幸いにも割られた塩漬けオリーブの瓶は最小限で済んだため、家まで戻る必要もなかったし、時間の遅れについても事情を話すと皆が皆理解してくれた。
 更に暴漢から身を守ってくれたということで、オーナーは私たちに昼食までサービスしてくれた。巻き込まれたトラブルなのに、そこまで気を利かせてくれるなんてとても嬉しい。
 そして、今、私はクルスさんを車に乗せて帰宅している。
「サラさんの実家は山のほうですか」
「うん、実家がオリーブ畑の農家だからね。今は4ヶ月前に漬けた塩漬けオリーブの出荷時期」
「3月? オリーブが採れるのは9月だと記憶していますが」
「それは普通のオリーブ。この国で育てられているオリーブは、黄金のオリーブなんて言われているのよ。30年ぐらい前に、経済危機に陥ったこの国を救うために1人の農家が立ち上がってね。品種改良を重ねて、名産物にしたのよ。おかげで今があるし、この国の人たちの多くはそれを称えているのよ」
「身を粉にして、国を、人を救う。なんとも偉大な人物だ」
「私もその人を尊敬しているのよ」
 私はやや強めにアクセルを踏んだ。古い車故に、強く踏まないと上手く坂を登ることが出来ない。新しい車に買い換えたいのは山々だけど、子供たちを学校に通わせるだけで精一杯。
「しかし、昼食の付け合せのオリーブの塩漬けは絶妙な味でしたよ。口の中で広がるオリーブの香りとほどよい塩気。ピザのトッピングとしても最高の組み合わせ。あれほどに美味いオリーブを食べたのは初めてです」
「ありがとう。でも、おじいちゃんに比べたらまだまだだから」
 難所の坂を上り終えた。坂を上り終えると、斜向かいの山の頂上あたりに国一番の屋敷が見えた。
「あの屋敷は? 空港からも見えましたが」
「有力議員の屋敷。10年前ぐらいにあそこに建ててね。観光地として、昼は公園として解放しているらしいのよ。私は場違いだから、行ったことがないけどね」
『ニュースの時間です。大統領選挙まで1週間を切りました。各報道機関の事前調査によると、革新党の代表議員であるパトリック・ゴーマン氏の当選確率が95%と予想されております。パトリック・ゴーマン氏は、国内外のあらゆる問題を解決してきた注目の若手議員であり……』
 私は車のスピードを緩め、ラジオを切った。
「そろそろ私の家に到着よ」
「あの白い建物ですか、まさに歴史情緒溢れる家だ」
「うん、昔からこの国で伝わる硝石灰の漆喰塗りの家よ。見た目も勿論だけど、防カビや抗菌、調湿作用もあるから夏も冬も快適に生活ができるの」
「機能性も芸術性も備わった建築物、先人の知恵というものですか」
 車から降りると、私は腰を伸ばし、深呼吸をした。いつもと変わらず、空気が気持ちいい。
 しかし、その余韻に浸っている場合でもない。まだまだ私には、やるべき仕事がある。
「手伝ってもらうのは少し気が引けるけど、クルスさん荷台の木箱をあそこの倉庫に運んでくれないかな? 私は、ここで瓶を洗っておくから」
「はい、分かりました」
 そう言うと、クルスさんは荷台の木箱を軽々と10箱ほど持ち上げて、倉庫へと向かった。
 私はクルスさんの身体能力に驚きを隠せなかった。私もこれぐらいは悠々と持ち上げることは出来るけど、私以外にこんなことが出来る人がいるなんて。普段から、重たいものを運んでいるのだろうか?
「あっ、私も仕事をしないと!!」
 気を切り替えて、私は瓶の洗い始めた。
 常に清潔でなければいけないだけに、何よりも念入りに洗って乾燥しなければ。この過程に手間を惜しみ、食中毒でも起こしたら台無しだ。みんなの喜びの顔が、落胆の顔へと変わってしまう。
 おじいちゃんに教えてもらったことを常に忘れず、私は瓶を洗う、無心で洗う、ひたすら洗う。
「あれ?」
 突然、ホースから水が出なくなった。
 ここ数日、水が出が悪かったりとあまり調子が良くなかったが、ついに水道が壊れたのだろうか?
「う~ん、こんな時に水が出ないなんて最悪……」
 私は蛇口を捻り直した。これで水が出なかったら、業者を呼ばないといけない。そうなると、余計な出費で家計は火の車。
 そんな不安が頭の中を支配しかけていたが、それを吹き飛ばすかのように水は再び流れ出た。
「良かったぁ、まだ修理しなくて……、きゃあっ!?」
 突然、狂ったかのように水が勢いよく噴出した。
「ちょっ、ちょっと止めて!!」
 私は蛇口を急いで閉めようとするが。
「と、取れちゃった……」
 完全に壊れてしまった蛇口。
 こうなるとどうしようもなかった。今すぐにでも業者を呼んで、直してもらわなければ。
 でも、その前にこの服をどうにかしないと。シャツも、ジーンズも、ニット帽も、下着も濡れて、とても人に見せられるものではない。
 私はジーンズを脱ぎ、ニット帽を脱ぎ、雑巾絞りの要領で絞った。
「あーあ、今日はとことんついていない一日だなあ……。せっかくクルスさんと出会えっていうのに、なんでこんなトラブルばっか……」
「何かあったのでしょうか、サラさん!?」
 倉庫から飛んできて駆けつけてきたくれたクルスさん。
 私を心配してくれるのはとても嬉しかった。
 ただ、心配してくれる以上に困ったことが起きてしまった。
「サラさん……、そのネコみたいな耳と尻尾は一体……」
「あっ、その、これは……」
 誰にも知られてはいけない極秘事項(トップシークレット)を、クルスさんに知られてしまったことだ。

 私が皆に秘密にしていること、それは私が人間ではないことだ。
 私のお母さんとお父さんはアル・ビシニアンと呼ばれる猫を祖先とした宇宙人の一族であり、私はお母さんとお父さんの間に産まれた子だ。ただし、生まれはお母さんとお父さんの故郷であるアル・ビシニアンではなく、地球で産まれたアル・ビシニアンだ。地球産まれの宇宙人、どこかおかしい言葉だけど、私はこの星の人間として誇りを持って生きている。
 でも、誇りだけでは生きることはできない。産まれ持ってあるネコ耳とネコの尻尾、これが私が地球で生きるにおいての最大の問題。
 元来のアル・ビシニアンは、胎児の時に翻訳機能とそれらを隠す機能を遺伝子に組み込んでいるらしいけど、私は地球生まれだからそんなものはないし、アル・ビシニアンに帰化していないから翻訳機能と耳と尻尾を隠す機能を持つ装置も持っていない。そのため、それらを隠して生きなければならない。隠さなければ、世間から迫害されるからだ。
 だから、私はずっとずっと隠して生きてきた。昔出会ったとても偉そうな人たちと私を引き取ってくれたおじいちゃんと以外に。

「驚きました、宇宙人が本当に存在するとは……」
「クルスさんは優しい人です。でも、これだけは見せたくありませんでした……」
 新しい服に着替え、新しいニット帽を被り終えた私は、クルスさんと二人で秘密の話をした。元々はおじいちゃんが物置部屋として使っていた、あまり広くはないけどとてもお気に入りの部屋で。
「本当の私を見て、どう思いますか? 変な目で見ますか? それとも、私のことをみんなに言いふらしますか?」
「そんなわけない。寧ろ、よく頑張っているなと思ったぐらいですよ」
「えっ?」
 意外な答えに、私は驚いた。
「最初は戸惑いましたが、この地球の一員として生きるため、ひたむきに秘密を隠して生きる。それがどれだけ大変なことか。疎外感とか、孤独感といったものを感じることなんかもあったんじゃないでしょうか?」
「う、うん。学校に通っていた頃は、いつもニット帽を被っていたから苛められることも多くてね。まあ、今はそういうことはないかな?」
「そうでしたら、それがあなたの努力の賜物ですよ。みんながサラさんのことを認めてくれた。ありのままのサラさんのことを」
「そう言われると嬉しいです……」
 私は俯き、顔を赤らめた。他人から自分の生い立ちを褒められるなんて、どれだけ嬉しいことやら。
「でも、ここまで生きていけたのも全部おじいちゃんのおかげ。おじいちゃんがいなかったら、きっと私はいなかったかもしれない。そして、私はおじいちゃんの恩を返すために――」
「ただいまー!!」
「かえってきたよー!!」
「おーかさん、ただいまー」
 外から元気な声が聞こえてきた。子供たちの帰宅だ。
「お帰り、みんな。今日はどうだった?」
「うん、今日も先生に怒られたよ」
「もう先生に迷惑をかけないの」
「あれ、この人は?」
 年少のジーナちゃんが、小さくて可愛い手でクルスさんを指差した。
「命の恩人だよ」
「ふーん、逢引していたんだね。サラお姉ちゃんも、結婚を考えるようになったんだー」
 私とクルスさんを見て、ニヤニヤ笑うアレックスくん。
「そ、そんなわけないでしょ!!」
「やっぱりそうなんだー!!」
「こらー!!」
 私が怒ると、アレックスくんは「べー!!」と言いながら、外へと逃げた。
「もぉー、いっつもこれなんだから」
「あの子たちは、サラさんの兄妹でしょうか?」
 私は首を横に振った。
「アレックスくんは、いや、ここにいる子供たちは両親がいないの。事故とか貧困とか色々理由があるけど、私はそういう子を引き取って育ているのよ。おじいちゃんが私を引き取って育ててくれたように、私も恩返ししないとね」
 私はクルスさんに言い聞かせるように言った。

 どうでしたか、今回のカノゴクは?
 次回は予定がない限りは、日曜日更新予定。ネコ耳宇宙人であることが明らかになったサラ、そしてそれを知ったクルス。彼女と彼の間で、一体何が起きるのだろうか?それは見てのお楽しみにということで。