銀河英雄伝説5巻

 遅いじゃないかロイエンタール――ウォルフガング・ミッターマイヤー

 スペースオペラ大好き蔵間マリコです。
 いや~、原作OVA版道原かつみ版も好きですけど、こっちもいいですよねえ。現在、週刊ヤングジャンプで連載中の原作田中芳樹、作画藤崎竜のスペースオペラ漫画『銀河英雄伝説』が。
 広島では土日を挟んだので3日ほど遅れましたけど、発売日にしっかり買いました。やっぱりねえ、銀英伝は俺にとって青春の小説でありますからねえ。これを発売日に買わずして何と言う?まあ、発売日に買っていない巻がありますけど。
 さて、最新コミックス5巻ですけど、原作でも好きな場面の一つなんですよねえ。ミッターマイヤーとロイエンタールの初登場エピソードは。三国志で例えるのなら、桃園の誓いそのもの。これなくして、銀英伝を語れるかっていうもんですよ。あとはこれにオーベルシュタインがいれば、銀河帝国サイドの根幹は完成といったところである。
 しかし、「遅いじゃないかロイエンタール」は本当にずるい。これが初めてという人にとっては何の意味か分からない話かもしれませんが、物語の終盤で非常に意味のある言葉になりますからねえ。まあ、それを知った時には、色々と辛いことになりますが……。

 とまあ、なかなかと見所の多いフジリュー版銀英伝。最初はちょっと不安でしたが、今じゃあヤンジャンの主力作品の一つとなっております。単行本の購入層の大半は従来の銀英伝ファンかもしれませんが、中にはフジリュー版銀英伝から銀英伝にはまったファンもいるかもしれません。
 個人的にフジリュー版銀英伝の最大の魅力は、なんと言ってもフジリュー版ならではのキャラの扱いだと思います。原作だと脇役やチョイ役程度のキャラが、フジリュー版ではスポットライトが当てられたり、よりキャラ映えしやすい性格になったりとかなり弄られているところがポイントだと思う。
 例えば、このコミックス最新刊でも出番の多いフレーゲル男爵。OVA版道原かつみ版だと細身でマッシュルームヘアーのただの小物だったけど、フジリュー版だとかなりアレンジされている。原作同様に小物であるのは同じだけど、妙な爽やかさと銀河鉄道999の機械伯爵的な邪悪さがブーストされているようなキャラになっている。言うならば、「貴族である私が、お前ら平民たちになにやっても構わない」的なことだろうか?こうなると親玉のブラウンシュヴァイク候も我侭な腐敗貴族から相当なクズになっているだろうな。ここまで弄ると、まさに倒されるべくして倒された相手として相応しいものだろう。
 あと、パエッタ中将なんかも顕著に現れている。第4次ティアマト会戦の前哨戦にあたる惑星レグニッツァ上空の戦いで兵の8割を失うのは同じだが、アスターテ会戦での扱いが全然違う。第4次ティアマト会戦自体、本編のアスターテ会戦よりも後に書かれた話。そういうのを考慮してか、パエッタ中将への風当たりの強さが色濃く描かれている。
 部下たちからは命を預けられないと不信を募らせ、トリューニヒトからは出世と後退というアメとナイフをちらかつされ、3個艦隊の総司令官不在という異常事態で会戦することになる。数でこそ4万対2万と圧倒しているものの、連携もままならないのだから勝てるわけがない。そんな中の責任者の一人を任されるのだから、メンタルがズタボロにならないわけがない。その結果、負傷かつ心が折れたまま退場……。頑張ってはいるけど、凡人の限界を描いた悲壮的なキャラとなっている。
 パエッタ中将のファンにとっては厳しいものかもしれないが、個人的には外伝と本編の繋がりをしっかりと意識した改変だと思う。

 原作とも、OVA版とも、道原かつみ版とも違う魅力のあるフジリュー版銀英伝
 この調子で原作のラストまで話を進めてほしいものだ。ただ、完結するまでに何年かかるのかが分からないから、ちょっと不安でもある。多分、今のペースだと7~8年はかかりそうだ。道腹かつみ版ほどじゃないにしろ、なかなかと大変そうだ。