今週も何とか日曜更新。

 二束の草鞋は大変だと思う蔵間マリコです。
 さてさて日曜日ですので、いつものコーナーを更新しますよー。貧乏高校生の夏目大和と、ネコ耳宇宙人のデュタ、ミミとミューナとの共同生活を書いたオリジナルのSFファンタジーライトノベル『彼女たちの極秘事項(トップシークレット)』、略してカノゴクを。
 先週に引き続いて、今週も予定通りに日曜日更新。別段当たり前のことなんですけど、その当たり前のことができない日が続いていましたからねえ。ライトノベルの更新以外にも色々とやることがありますし。ただ、自分で決めた以上のことは両立してナンボですからね。無理をしない程度に、日曜日更新頑張りますわ。
 とまあ、前置きはこれぐらいにして、そろそろ本題へ入らせてもらいます。先に言っておきますが、お世辞にも上手な内容ではありませんよ。それでも読んでくれると非常にありがたいです。
 それでは、今回のカノゴクをどうぞ。 

第20話 ある夏の物語(5)

「エリア51のエージェント!? どうして、地下500mにあるこの工場が分かったというのよ!? 特殊妨害電波も飛ばしていたのに!!」
「簡単なことですよ。あなたたちがこの工場へ転送されるところを私も同行しただけですよ。あれ? もしかして、気付きませんでしたか? ドラッグ王のパトリックさんとカファード星人のバリブムさん」
 とはいえ、ここまで辿り着くのにはかなり骨が折れたのも事実。狡猾でいながらも、足跡を禄に残さないカファード星人。それが前回の戦闘においてようやく足取りとなる情報を手に入れることが出来た。このチャンスを生かすためにも、念入りに身辺調査を行っていたのだ。
「バブリム君、この男のことを知っているのかね?」
「我々の仕事を邪魔する商売敵と言ったところかしらね? それも、一番厄介な奴よ」
「そういうことですか」
 緊急事態が起きているにもかかわらず、相変わらず平静なパトリック。事の重大さに気が付いていないのか、あるいは平静を装っているのか。どちらにしても、大した問題ではない。
「しかし、ここまで来たのだから手厚く迎え入れるのが礼儀というものだ」
 シリンダーに満たされた緑色の培養液が、不気味な吸引音とともに地中に埋め込まれたチューブへと流し込まれる。
 全てのシリンダーから培養液が放出された後、シリンダー壁は天井に飲み込まれ、中から粘液まみれの人間が現れた。
 否、人間ではない。かつて人間だったが、地球外由来成分の培養液によって怪物へと変貌した生命体だ。
「やはり、パーティーというものは一人でも多いほうが楽しいからな。司会は君に任せるよ」
 そう言うと、パトリックは余裕そうに地下工場から脱出した。
「私に任せるっていうの? 私が技術も何もかもを与えたというのに。でも、そっちの方が暴れ放題だし、都合がいいわ」
 覚醒した超人兵器全てに対して、バブリムはサイグロ式プラズマライフルを転送した。威力こそは低いが、対人兵器としては十分に殺傷力が高く、チャージも不要の最新型のライフルだ。
 それだけではない。デスストーカー10機、コックローチ7機、スカベンジャー5機を同時に召喚。私一人を相手にするにはいささか過剰な戦力である。
「逃げましたか。仕方ありませんね」
「余裕ぶっこいていられるのも、今のうちよ。泣いて謝ったって、我々は許さないんだから」
 バブリムは真の姿を露とした。
 バブリムは擬態していた人間の外面が反転し、無数の兵器が剝き出しとなった黒金の巨人に変貌する。その身長は間違いなく5m以上はあるだろう。
「グチャグチャのミンチ肉にして、可愛い私たちの眷属のご飯にしてあげる」
「塵虫以下」
「何か言ったかしら?」
「塵虫以下ですよ、塵虫以下」
「そ、それが何かしら? あなたたち下等種族が我々にそのような口答えを?」
「人道も倫理もないカファード星人が、塵虫以下と何と呼ぶのでしょうか?」
「撃てッ!!」
 バブリムの声とともに、集中砲火が始まった。
 超人兵器と無人戦闘兵器たちによる、面制圧の飽和攻撃。
 普通ならば、たちどころに肉片一つ残さず消えていただろう。
 しかし、その程度の攻撃は幾度となく乗り越えてきた。これよりも20倍近くの敵を一人で相手にし、皆殺しにしたことだってある。それと比べると、この攻撃は生温いの一言である。
 スロー再生のように見える銃弾とレーザー掃射と迎撃ミサイルを掻い潜り、一人目の超人兵器の首を手刀で刎ね、胴体を投げつけて目眩まし、すかさず2体目と3体目の超人兵器の胴体を切断する。奪ったサイグロ式ライフル2丁を拾い上げ、宙でくるりくるりと舞いながら全方位に向けて乱射する。流石に相手も相手だけに致命打を加えることは無かったが、連携を崩すには十分すぎるくらいの猶予を手に入れた。天井を蹴り上げて、デスストーカーにめがけて肘打ちで頭部を破壊。更にスカベンジャーの弾幕の嵐を紙一重で避け、胴体に1発ストレートで大穴を開けて、動力部分を引きずり出す。
「な、何をしているのよ!! 早く、早く殺してよ!!」
 バブリムがいらつきながら指示を出すものの、それは意味のない行為。私は、最小限の行動と攻撃で最大効率を稼ぎ、次々となぎ倒す。
 心臓を抉り取り、首をもぎ取り、動力炉を潰し、思考プラグラム回路を破壊する。ありとあらゆる方法を駆使して、敵の数を順調に減らしていく。
 そして、瞬く間にバブリム以外の敵はいなくなった。
「どうでしたか、私のダンスは? パーティー、十分に盛り上がりましたよね?」
「や、やるじゃないの。あなたの言っていただけはあるわ」
 バブリムは巨体を左右に揺らしながらも、威圧感を振りまきながら私の手前に現れた。
 遠目から見てもかなりの巨体であったが、実際に目の前まで現れると想像以上の大きさだ。
 もっとも、大きいからといって私に勝てるわけではないが。
「でもね、私には勝てるはずがないのよ!!」
 バブリムの巨大な両の手から目にも留まらぬスピードのパンチが放たれた。
 青白い電気に包まれた両腕。喰らえば、ミンチ肉どころか血の霧に還るであろう恐るべき一撃。恐らくはバリア対策だけでなく、超電磁振動機構によって触れることも許されない攻撃であろう。
 私はそれを見越して回避し、20m先まで引き下がった。
 パンチはコンクリート製の床を叩きつけられると床が突然大爆発を巻き起こし、爆風で周囲の器具やコンクリートの柱、超人兵器の死体を粉砕した。
 私は顔に飛んでくる爆片を瞬間的に回避をする。服は破け、掠り傷こそ負えど、ダメージらしきはダメージは受けていない。
「私のパンチを避けるとは流石ね」
「アレがパンチでしたか。てっきり大道芸か宴会芸だと思いましたよ」
「その余裕の笑顔、今すぐ泣きっ面に変えてやるわ!!」
 怒りに身を任せたバブリムは再び豪腕のストレートパンチを放った。それも先ほどよりも遥かに早い。傍から見れば、色のついた風が吹いたという程度にしか見えないかもしれない。
 だが、私は喰らうつもりなどなかった。
「では、本気を出させてもらいます!!」
「なっ!?」
 超電磁振動機構に巻き込まれないギリギリの距離を保ちながら、腕の下に滑り込む。
 そして、そのまま私は。
「ふんっ!!」
 槍のように鋭く伸びたバックキックを胴体に決めた。
「ぐぬうぅっ!?」
 弾き飛ばされるバブリムだが、二本の摩擦線を残しながらも数mほど下がりつつもなんとか持ち堪えた。
 だが、私はこの好機をみすみす逃すわけがなかった。
「はぁっ!!」
「ぐぅっ!?」
 体勢を立て直そうとするバブリムに、地を滑るような回し蹴りを両足へと仕掛けた。
 バブリムはそれを対応することが出来ず、両足を一撃の下に切断され、そのまま倒れた。
「そりゃあっ!!」
「ぐがぁっ!?」
 両足を失ったバブリムがバランスを崩したところ、ボーリング掘削機じみた右腕肘撃ちで右肩を吹き飛ばした。
「無駄です!!」
「や、やめろっ!!」
 翻って、鞭のようにしなやかでいながらも斧のように切れ味鋭い左手からのチョップで丸太のような左肩も破壊した。
 そして、とどめは。
「これでとどめです!!」
「やめろおおおおおおおおおおぉっ!?」
 アイアンクローで頭部を万力のように捻じ切り、投げ捨てた。
 四肢と頭部を引き裂かれ、動かなくなったバブリム。
 しかし、これで終わりではない。
 胸板を軽く小突き、割れ目に手を挟み、胸板を引き裂く。
 中から現れたのは、一匹の矮小で醜悪な小蟲、カファード星人だった。
 現地の知的生命体に擬態し、横流しされた兵器と違法ドラッグで儲け、疲弊したところを侵略し滅ぼす寄生虫。かと思えば、逃げ足はゴキブリのように速く、責任を全て現地の知的生命体に擦り付ける疫病神。我々アル・ビシニアンに限らず、多くの者が辛酸を舐めたであろう。
 だが、今日はそうではない。カファード星人の敗北だ。
「最終通告です。ここで降伏すれば、命だけは助けてあげましょう」
「さ、流石はエリア51のエージェント……、あんたの実力は認めるわ……。だが、このままで助かると思っているの?」
「それはどういうことでしょうか?」
「わ、私の裁量一つで次元転移ゲートを封鎖することだって出来るのよ? それにあのゲート以外からここの工場に行き来できないように施しているわ。そうなったら、あなたは死ぬまでここから出られないわ。どうするのかしら?」
「それならそれで構いませんよ。脱出する方法ならいくらでもありますから」
 私はバブリムに対してライフルを向けた。
「そうよね……。エリア51のエージェントが脱出方法を用意していないわけがないよね」
 どこか諦めの色を匂わせる言い回しとイントネーションだった。
 しかし、狡猾な手に秀でたカファード星人だった。
「じゃあ、死になさい!!」
「そうきましたか」
 閉鎖された空間に、乾いた二発の銃声が鳴った。

 どうでしたか、今回のカノゴクは?
 今回は前回のラストで登場したヴァンの戦闘を書きました。まだまだ足りない部分はありますけど、今できる自分のことをやった気がします。
 この場面での一番のポイントは、やはりヴァンの戦闘。ヴァンの戦闘自体は既に第3話、あと僅かながらに15話で書いていますけど、前者は敵として立ちはだかり、後者は描写が僅か。なので、味方としてのまともな戦闘描写はこれが初めてですね。そのため今回の戦闘は、白銀の流星という二つ名に相応しい圧倒的な戦闘を書いてみました。素手での戦闘も、武器を使っての戦闘も。
 その一方で反省すべき点がある。今回登場した新兵器のコックローチとスカベンジャー、そしてカファード星人、これらの外見描写が不足だったと言わざる得ない。一応、設定そのものはしっかりと書いているし、それをどうにか活かそうとは思ったんですけどねえ……。思うようにはいかないものだ。

 なかなか上手くいかなくても、楽しく書いているオリジナルのライトノベル、カノゴク
 次回はいつものように日曜日更新予定。カファード星人と激戦を繰り広げたヴァン。しかし、これで戦いがまだ終わるわけがない。その戦いの行く先は?それを見てのお楽しみにということで。