毎週1回更新、これが基本!!

 少しでもいいものが作れるように試行錯誤をしている蔵間マリコです。
 さてさて日曜日ですので、いつものコーナーを更新しますよー。貧乏高校生の夏目大和と、ネコ耳宇宙人のデュタ、ミミとミューナとの共同生活を書いたオリジナルのSFファンタジーライトノベル『彼女たちの極秘事項(トップシークレット)』、略してカノゴクを。
 いや~、予備のPCでライトノベルを書いたり、ブログを書いたりしていますけど、なんか今まで使っていたPCとは違って、なんかちょっと違和感がありますねえ。キーボードとかもそうですけど、予備のPCのOSのほうが新しかったりと戸惑うところが色々とあります。幸いデータは全部逃したので大丈夫ですけど、それでもまだまだ問題が多いですからね。さっさと新しいPCを買いたいものです。
 とまあ、前置きはこれぐらいにして、そろそろ本編へ入らせてもらいます。先に言っておきますが、お世辞にも執筆力があるとは言えません。それでも読んでくれると非常にありがたいです。
 それでは、今回のカノゴクをどうぞ。 

第20話 ある夏の物語(5)

 バブリムから連絡が届いた。
『超人兵器が全滅した。お前の命も危ない』
 地下工場を嗅ぎ当てた時点で只者ではないことは察したが、たった一人相手に超人兵器軍団を壊滅させるられるとは。安全策を取って、屋敷から逃げたのは正解だった。
 しかし、いざという時のヘリポートを作らなかったのは間違いだった。国民へのイメージを損なわないためにも車での出勤だけで済ましていたが、そのまさかその時が訪れるとは。
 オマケに原因不明の電波障害まで起きている。これでは、軍に連絡をすることも出来ない。
「クソッ、クソッ!! 何で今日はこんな厄日なんだ!?」
 俺はハンドルを叩きながら、怒りをぶちまける。
 ドラッグ王として裏社会を支配し、表社会で政治家として活動してからはや15年。不祥事は金や権力、暴力で握りつぶしながらも着々と伸し上がってきた。そして、大統領選まであと1週間と迫るところまで来た。このまま選挙が始まれば、間違いなく当選であろう。そうなれば、この国を我が物にすることが出来たのに。
 それなのに、あの男が現れて……!!
「クソッ、クソッ、クソッ!!」
 フロントミラーで口角が割れていることに気がついた。怒りのあまり、大枚はたいて整形した顔が崩
れているというのか?
 だが、そんなことを気にしている場合ではない。一刻も早く軍を召集して、あの男を抹殺せねば。
 突然、鼓膜が割れそうなほどの爆音が背後から聞こえた。
「な、なんだ!?」
 フロントミラーから見える光景、それは非現実な光景だった。
 一条の光の柱が屋敷を貫き、そして屋敷が爆発炎上を起こしたのだ。
 間違いない、あの男の仕業だ。
「俺の人生を滅茶苦茶にしやがって!!」
 鞄の中に入った残り少ない高級葉巻を吸って落ち着こうとしたが、冷静になれない。
 こんなことが、こんなことが起こるなんて。


 私はクルスさんにある場所へと呼ばれた。
 エーゲ海を眺めることが出来る場所で、隠れた絶景のスポットとも言える崖だ。
 そこは観光名所のリストにも書いておらず、地元の人間でも知っているものが少ない穴場だ。
 しかし、どうして私なんかが呼ばれたのだろうか?
「サラさん」
「はい、なんでしょうか?」
「私と結婚してくれないか?」
 衝撃的だった。まさか、クルスさんから婚約の告白をされるなんて。
「えっ、私でもいいのですか!? 今日初めてデートをしましたし、私よりももっといい女の子はたくさんいるし、それに何よりも私は宇宙人ですし……」
「君じゃないとダメなんだ。君に勝る女の子なんてどこにもいない。だから、これを受け取ってくれ」
 クルスさんが渡した物、それはシンプルな白い小箱が。
 開けてみると、それはとても気品漂うエンゲージリングだった。
「クルスさん……」
 嬉しさのあまり、涙まで溢れてしまった。こんなに嬉しい日は、今までにあったのだろうか?
「サラさん」
「クルスさん、私はクルスさんのおよ……」

 爆音が鳴り響き、軽い振動が伝わった。
「はっ!?」
 私は幸せな夢から覚め、現実に引き戻された。
「私、あのまま寝ちゃったんだ……」
 クルスさんが掛けてくれたであろうブランケットに感謝し、何があったのかと窓から外を眺めた。
 燃えている。
 山頂にある有力議員、パトリック・ゴーマンの屋敷と国立公園が炎に赤々と包まれている。
 これだけでも一大事だというのに、ここまで響き渡る爆発音。一体何があったのだろうか?
「何があったの……、うっ!?」
 突然、右側頭部に突き刺さるような痛みが走った。
「う、うううううぅ……」
 痛みのあまり、その場に崩れる落ちるように座り込んでしまった。
 私の頭の中で何かが疼く、何かが蠢く。
 それが何かは分からない。
 だけど、それが何であるかはおぼろげにだが覚えている。
『……んだ、この俺に……文句でもあるの……』
『……ぶない、サ……!!』
『……術、完了……』
 胸を圧迫され、肺の空気が全て押し出されるような感覚に襲われた。
 息が苦しくて、頭が痛くて、動けないどころかクルスさんの助けを呼ぶことすらできない。
「お、落ち着かないと……」
 私は深呼吸をして、冷静になることに努める。
「すぅーはぁー、すぅーはぁー……」
 1分は深呼吸をしただろうか、ようやく私の中で動いていた何かが鎮まった。
 一体、私の身に何があったのだろうか? 直感的だけど、病気などの類じゃない。でも、それよりももっと怖くて、もっと恐ろしいものが私の中で眠っている。それが目覚めれば、私はきっと……。
「お、おかあさん……」
「どうしたの、マリーちゃん?」
「おかあさんの顔、怖いよ……。何かあったの?」
「えっ?」
 私自身気付かなかったが、この時の私は苦悶とも憤怒とも言えぬ表情だった。ただ、その表情に気付かないほどに激痛で意識する余裕など無かった。
「ご、ごめんね。お母さん、ちょっとつまずいちゃって。ちょっと痛かったのよ。それよりも、みんなどうして起きているの?」
「外から大きい音が聞こえて目が覚めちゃったんだ。そしたら、山のほうが火事で……」
「それで、アレックスくんがそれを確かめに外に出て……」
「アレックスが……」
 嫌な予感がした。こんな真夜中に外に出るなんて、あまりにも無謀すぎるからだ。
「お母さん、探しに行くから、みんなは部屋に戻って寝てね!! 何かあったら、クルスさんに助けてもらいなさい!!」
「おかあさん、クルスさんが……」
 私は碌に外に出る準備をせずに、曇り気味の外へと出た。
 行く宛ては分からないが、周りがまともに見えない状態で行ける場所なんて限られている。
 私は森の道沿いに走る、走って叫ぶ。
「アレックスくーん!! どこなのー!! いたら返事をしてー!!」
 返事が無い、何度呼んでも何度呼んでも。
 もしかして、逆のほうにいるのだろうか? あるいは、既に家に戻っているのだろうか? それとも、どこかに落ちたとか……。
 家に戻っているのなら、ただの取り越し苦労で済むけど、崖から落ちたりでもしたら……。
 そう思うと私は更に早足になった、そして声も大きくなった。
「アレックスくーーーん!!」
「……さーーん!!」
 遠くからアレックスくんの声が聞こえてきた。やっぱり、こっちで間違っていなかった。
「アレックスくーーーーん!!」
「……ぁさーーん!!」
 だんだん距離が縮まっていく。このまま行けば、アレックスくんと出会える。そうしたらちゃんと叱って、抱きしめてあげないと。
 私は声が枯れそうなくらいに大声で叫んだ。
「アレックスくーーーーーん!!」
「おかあさーーん!!
 ついに、私の視界にアレックスくんが見えた。
 ああ良かった、一生懸命探して。これでアレックスくんもみんなも私も悲しい思いをせずに済む。
 でも、その前にいっぱい叱ってやらないと。そして、暖かく抱いてやらないと。それが親としての役目だ。きっとアレックス君も分かってくれるかもしれない。
 しかし、それは叶わなかった。
 突然、ライトに照らされたアレックスくんは私の視界から消えた。
 一瞬光る何かが通過をし、金属とガラスの衝突音と爆発音がした。
「えっ……」
 私の足取りは遅くなった。
 何が起きたのか、想像がついたからだ。それを認めたくなかったからだ。
 ゆっくりとゆっくりっと、アレックスくんの所へと向かう。
 そして、森の中のT字路まで辿り着くと、私は。
「きゃああああああああああっ!!」
 慟哭した。
 アレックスくんが車に撥ねられ、ピクリとも動かず、血溜まりに倒れていた。
「アレックスくん!!」
 私は再び全力で駆けつけた。
「アレックスくん!! アレックスくん!! 返事をして!! ねえ、お願いだから!!」
 私は気が動転したまま、アレックスくんをゆさゆさと揺らす。
 本来ならば、もっとすべきことがあったかもしれない。でも、今の私にはそれを考える余裕すらなかった。
「く、くくぅ~、誰だ……、誰がぶつかったんだ……」
 私は声の聞こえるほうへと視線を向けた。
 そこには、岩に激突して大破した黒塗りの高級車が一台あった。
 半ば原型を崩し、散らばったアタッシュケースからは白い何かが入った透明な袋がいくつも散らばっている。そして、高級車から現れたのは、葉巻を吹かしながら頭から血を流した凶相の男。
「こ、こんなヤバイ時に、事故りやがって……!! もしかして、貴様がこのガキの保護者っていうのか!? どうするんだよ、この車!! 早く車を貸しやがれ!!」
 激昂する悪人面の男は拳銃を取り出し、私に銃口を向けた。
「あなたは……」
「あん? 何泣いているんだよ? 早く、車出せよ?」
「うっ!?」
 再び頭痛と胸の痛みが襲った。それも、先ほど以上の痛みだ。
 私は狂い死にそうなほどの痛みに、その場に屈みこんで唸り声をあげた。
「ううううう……」
 痛みに慣れたてきたのか、痛みが徐々に引いていく。
 その代わりに現れたのは、私が押さえ込んでいた蠢くものだった。
 私がお父さんとお母さんが働いている工場への見学。
 そこで出会ったタバコを吹かした悪そうな形相の男の人。
 タバコの不始末による工場施設の爆発、お父さんとお母さんの死。
 瀕死の重傷からの何者かの手術による蘇生。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
 私は叫んだ、雨雲に向かって大きく叫んだ。
 それに呼応するかのように、雷鳴が轟き、雨が降り始めた。
 こいつだ、こいつが私の全てを奪ったのは。
 お父さんを、お母さんを、おじいちゃんを、アレックスくんを、私の大切なもの全てを。
 どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして!!
 どうして、私はこいつに全てを奪われないといけないの!?
 だったら、奪ってやる。
 お前のなにもかもを奪ってやる。
 私がお前に全てを奪われたように、私もお前の全テを奪い尽くしてやる。
 いや、お前だケではなイ。
 全テだ、コの星ノありトあらユる物をダ。
 コノ星を奪イ取り、こノ星ヲ我々の物とシテしマエ。
「我々ハ時ノ超越者ナリ、肉ノ器ヲ授カリシ者ドモノ全テヲ奪イシ者ナリ」

 どうでしたか、今週のカノゴクは?今回はドラッグ王パトリック・ゴーマンと、サラの視点で物語を進めました。
 う~ん、個人的には書いている時もかなり苦労した部分だし、その苦労に見合ったほどの完成度ではないところが気になります。サラもパトリックも、自分のイメージしたものとは違ったものになっているというか、上手く作れていないというか。どうにも練りこみ不足を感じてしまいます。書いている時は気にならなかったのに。まだまだ修行不足といったところです。
 特にサラとパトリックの関係性。自分としてはそれなりに匂わせたつもりなんですけど、いまいち繋がりが弱いと言いようがありません。サラは工場火災の犯人が誰かをおぼろげに覚えているぐらいのヒントを出せば良かったし、パトリックはパトリックで本人は気づいていなくても、サラと繋がりがあることを匂わせる。そのぐらいのことをすれば良かったんですけどねえ……。
 あと、謎の声についても全然禍々しさが出ていないのがマイナス。ネタバレになるから多くは語れないけど、自分のイメージとは随分違う気がします。脳内のものを上手く出力するのが、難しいことを改めて実感させられます。

 なかなか難しいけど、楽しく書いているオリジナルのライトノベル、カノゴク
 次回は特に予定がない限りは、日曜日更新予定。謎の存在、時の超越者。彼女を目の当たりにしたヴァンは、どんなアクションを取るのだろうか?それは見てのお楽しみにということで。