いやいや無理があるでしょ…。

 スキージャンプ漫画といえば、ノノノノが一番だと思う蔵間マリコです。
 ついに、来月発売するのかあ…。週刊ヤングジャンプで連載中のスキージャンプ漫画『ノノノノ』の最新コミックス12巻が。12巻といえば、前作のエルフェンリートの全巻と同じ巻数ですよ(話数に関しては、かなり前にエルフェンリートを越えたが。)。それと同じ巻数に並ぶのですから岡本倫の漫画のファンとしては、嬉しい限りである。
 さて、単行本12巻に収録される内容は、恐らくは順位の繰上げから皇帝の逆襲、そして真岡の失敗ジャンプが起こる場面あたりまでだろうか?11巻の内容以上に、カオスな方向に進んでいる場面ですね。個人的には、そこらへんの話というとノノのネコ耳の場面とかキャットレ○パー赫くんあたりが好きだな。全てが決まるIHというシリアスな場面でありながらも、たん独特の超展開やはっちゃけった展開。笑いとハラハラ感の隣り合わせのスキージャンプ漫画、それがノノノノだから。
 まあ、そんな楽しみなノノノノ最新コミックス12巻ですが、そろそろ本題の今週のノノノノのストーリーと感想でも。先週のラストの浅見の「家族が殺されてしまう。」発言。それが、どういった意味なのやら…。

 第134話『呪縛

 IHで優勝しなければ、家族が殺されてしまう―――。
 浅見の口から漏れた思いもかけない言葉。スキージャンプと家族の命。一見、全く関連性のないキーワードだが、彼らには非常に重要なものであった。そして、その言葉に耳を疑った人間が一人。奥信高校の野々宮悠太である。
 悠太は問い詰めようとするが、浅見は部外者だと門前払いしようとする。しかし、悠太はそこで引き下がらずに食いつく。もし、何か出来る事があるのなら協力をしてあげる。そんな言葉に対して、浅見はこう返答する。「もし、君が…、雪野高校の選手なら負けてくれと頼むところだがな。奥信高校はもうターゲットから外れている。君に頼めることは何もない。」と。奥信高校の選手を前にして、無礼な発言にムッとする悠太。
 そこで、悠太は切り口を変えるために、鷺坂から真相を聞き出そうとする。上半身裸で帰るという件を無くす代わりに。甘えたくないと脊髄反射的に反論する鷺坂だが、その条件はスーパー女の子である鷺坂にはこれ以上とない条件だ。二律背反の感情に、鷺坂は思わず涙。
 そんな鷺坂の妙な光景を見て、浅見は根負けしたのか、ついに悠太に事の経緯を話すのであった。他言無用という条件付で。

 彼らが住んでいた小さな島の小さな村の事。島民の信じて疑わなかった自分達の島の神様。15年に1度の生贄の儀式。生贄として生まれてきた彼ら三人の生い立ち。賭けに勝ち、島からの脱出。そして、新しい祭司からの電話。その電話の内容が島に戻り、再び生贄にならなければ、家族全員殺すということである。
 その理由は、儀式において例外が発生したからだ。彼らの脆弱な自尊心の均整を保つために、何があっても生贄を殺さなければならない。そうしなければ、島に災いが起きた時、彼ら三人が起こしたものになると決め付けられているのだ。
 だが、戻るわけにはいかない。だからこそ、その劣等感を叩き直す為にも、大会に優勝しなければならないのだ。そうすれば、有名人、偉人が一人も輩出されていない島の住民も生贄にうって変わっての自信が与えられるはずだ。その結論が、スキージャンプでの日本一ということである。
 幸い、スキージャンプはその日本一を目指すという条件の中では、一番楽なものだ。スキージャンプの人口が少ないこともあるし、風を見る能力と瞬間的に時間をスローにして絶好のタイミングで踏み切る能力を持つ禰宜田にとっては絶好の競技である。ある意味、インチキかもしれないが、島の悪習が終わる事なら安い話。
 しかし、悠太はそれに納得がいかない。警察に話せば、さっさと解決する問題なのだから。そんな回りくどい事をしなくても。それに対し、鷺坂はそれを拒む。儀式の際、正当防衛とはいえ、旧祭司を殺してしまったのだから。言おうとすれば、鉄格子の中に直行である。それに、ろくでなしな親とはいえ、島で住み心地が悪くなるのはあまり気分が良くない。もっとも、優勝すれば、そんな関係ないのだが。
 浅見の語った真相と自論。悠太は、あまりに浮世離れした話に頭の中が整理できないが、その話の中で分かったことが一つだけあった。「君たちはスキージャンプをなめすぎだ。」。そんな神妙な表情の悠太の発言だったが、浅見は非も喜もない普通の表情で、素っ気無く返答するのであった。
 悠太、思わず独白する。『そうじゃない!!』と。

 その家族の命を賭けた禰宜田のジャンプ。暫定一位の遠野実業との差、およそ90m。それに比べ、禰宜田の1回目のジャンプの記録は120m。更に、風は良好。7段ゲートが下がっているものの失敗ジャンプでもしない限り、軽く越されてしまう。
 だが、ここに至って禰宜田は驚愕する。風が全く無い…。傍の目から見ても絶好の風が吹いているはずなのに、その異質な独り言に岸谷は不審に思う。
 その禰宜田の不吉な予言は、現実の元となった。彼の小言から間もなく、旗が全くなびかなくなったのだ。これで、禰宜田の能力の一つが封じられ、ジャンプするコンディションとしては最高な状態から、一転して劣悪なものとなった。
 それでも、禰宜田はスタートに出た。彼にはまだ、もう一つの能力、時間をスローにして最高のタイミングで踏み切る能力がある。それさえあれば、優勝など造作も…。
 しかし、悠太はそれを一蹴する。スキージャンパーなら、誰でもそのような能力を持っている。単に、その振れ幅が違うだけの問題だ。実際、悠太自身も好調な時は同じような現象が起きるのだから。
 地を離れ、飛翔。タイミングは、完璧。軌道も悪くない。これなら、IHを勝ち取ることが出来る。そして、島の住民たちにも証明することが出来る。自分たちが、井の中の蛙の存在ではないと。
 さて、家族の命と島の住民たちの誇りを賭けたジャンプは、どのような結果を迎えるだろうか!?

 んん~、今週は何か違和感が…。勿論、禰宜田たちの過去自体、この世間と剥離したものであるが、そういった意味合いでの違和感ではない。ストーリーの展開的な違和感だ。確かに分からなくもないけど、どうも納得がいかないからねえ…。ということで、今週は微妙な内容だったと思う。
 まず、家族が殺される件について。理由は、上でも書いている通りだけど、これがどうも腑に落ちないんだよねえ。なんていうか、浅見の思考があまりにも素人の浅知恵すぎる。確かに警察に通報すれば、禰宜田がどこぞやの変態コーチ同様にタイーホされるのは、間違いない。でも、本当に島民の意識を改革するには、それぐらいテコ入れしないと、とても無理な話だと思うぞ。それに、その実情が分かれば、政府だって、多少は村に対しての対処はするだろうし。
 でも、スキージャンプで意識改革するのは無理だと思うぞ。自信が無いから宗教に縋るのは分かるけどさ、スキージャンプでどうにかなるものか?目を瞑られ、聞く耳を持たなければそれまでの話だぞ。それに、その禰宜田のジャンプそのものが災いを呼ぶ力だと誤解されたら尚更だし。逆に、島民達の意識が増長しすぎて、変な宗教を本土に持ち込みそうで怖い。そういう事込みで考えていないから、浅見の考えに違和感を感じたのだ。
 あと、もう一つ、これの件で違和感を感じたのが、浅見の話の内容がKeyのギャルゲー『リトルバスターズ!』の三枝葉留佳ルートと二木佳奈多ルート(18禁版及びPS2版。)に被っているような感じで、一種のデジャヴと思ってしまった。あっちも、おやまのどうのこうのとか、おやまの人たちは偉いだのどうだので、世間とかけ離れた宗教じみた価値観の親類が出てくるからねえ。たんが、同Key作品の『Kanon』が好きだから、思わず勘繰ってしまった。まあ、リトバスのも微妙な話だけど。
 で、それに対して、悠太の「君たちはスキージャンプをなめすぎだ。」と『そうじゃない!!』の切り返し。これは、なかなか面白い台詞回しだと思った。何故なら、色々と読み取ることが出来るからだ。前者の「スキージャンプをなめすぎだ。」は、そのまんまの意味だけど、後者の『そうじゃない!!』、これが重要である。
 例えば、スキージャンプはスキージャンプ以外の目的を果たすための道具じゃないという風に読み取ることが出来る。奥信高校の悠太は家族の絆を取り戻すというのもあるが、元々はスキージャンプが好きだったから、今ここにいるわけだし、自称・ノノのライバルの真岡も、スキージャンプでノノに勝つという目的がある。他にも、暁もそうだし、皇帝もそうだし、伊東もそうだし。スキージャンプという目的に副次的なものがあるとはいえ、結局はスキージャンプに帰結している。
 だが、月山商業の三人、特に禰宜田はそういった愛着が無い。『崖』からのジャンプの延長線上としか見ていないのだから。そう思われちゃあ、本気で金メダルを目指している人間にとっては、これほど不愉快なことは無いからね。だから、『そうじゃない!!』という独白が出たのかもしれない。
 それとか、スキージャンプに対して覚悟の無いの生半可なジャンプをすれば、大怪我を免れないという意味合いとしても読める。禰宜田は、ある種、昔の悠太に近いキャラだからね。いや、遊び程度だとしか思っていないから、余計にタチが悪いかも。次回あたり事故っているか、もしくは『』ではなく、ここで生贄に…。まあ、どちらにしろ遠野実業のジャンプアップの可能性は出てきた。個人低には、そっちのほうを希望の方針で。

 さあ、波乱が起きそうな次回のノノノノ
 さて、禰宜田のジャンプはどのような結果を待ち受けているだろうか?逆転の大ジャンプ?それとも、微妙な記録?はたまた、エルフェンリートばりの血塗られた展開?再来週の木曜日が待ち遠しいです…。

 ノノノノ134話の評価

 満足度 ☆☆☆
 スポーツ度 ☆☆☆☆
 不安度 ☆☆☆☆


        ノノノノ134話