ああ、ついにストックが!!

 日々地道に書き続けている蔵間マリコです。
 さてさて、今週も更新ですよ~。貧乏高校生とネコ耳宇宙人二人との共同生活を描いたオリジナルのSFファンタジーライトノベル、『彼女たちの極秘事項(トップシークレット)』が。
 ここ最近はほぼ毎週更新し、連載も第22回となりましたが、ついに書き溜めていた分が無くなりました!!自分が遅筆(それでも週に15ページペースですが。)であるというのもありますが、ここまで早く消費するとは思いませんでした。一時期、イラストの方に精を入れていたのが祟ったのだろうか?
 ですので、今回の分が終わった後は、このコーナーの更新はしばらくストップするかもしれません。勿論、現在書いている第3話はしっかり書いていますし、もうそろそろ仕上げに入る所です。ただ、しばらく放置してからチェックしないとミスに気づかなかったりすることもあります。ですので、2週間は掲載がストップするかもしれません。元々の内容が内容だけにクオリティアップもクソもありませんが、客観的に見るためには必要な冷却期間ということですので。だから、そこは趣味で書いている身として許してください。
 そんななかなかオリジナルのラノベですが、今回はどうなったことやら?素人にしても残念すぎる文章力ですが、そこのところは温かく見守って下さい。それと、誤字・脱字の報告、感想なども書いてくれると非常にありがたいです。それでは、今回の彼女たちの極秘事項(トップシークレット)をどうぞ。
                  第2話 セカンド・インパクト(9)

 その後、俺たちは隣町付近や橘駅付近を数時間ほど捜索した。しかし、デュタは見つからなかった。
 時計の時刻は6時を過ぎている。日も暮れ始め、これ以上探すのにも時間的にも体力的にも限界だ。それに何より、ミミも疲労の色が出ている。少しでも早くデュタを見つけたいのは山々だが、無理強いさせるわけにはいかない。
「見つからなかったか……」
「にゃあ……」
 俺たちは重たい足取りで溜め息をつく。
「でも、明日がありますわ。その時は、お昼の弁当を持参しますわ」
「それいいね、妙ちゃん。私も弁当を作っていくよ」
 少しでも暗い空気を吹っ飛ばそうとそらと妙なりにフォローするが、それを覆すまでには至らない。
「まあ、今日はここでお開きにしようぜ。明日のためにもさ」
 武士の言うとおりだ。今日見つからなくても、明日には見つかるかもしれない。そのために体力を少しでも回復させないと。
「じゃあね、大和くん、ミミちゃん」
「大和さま、ミミさま、明日も頑張りましょうね」
「じゃあな」
 3人は俺とミミに明るく別れの言葉をかける。
「にゃにゃにゃ~!!」
 それに合わせて、夕日を背にミミも元気よく手を振る。。
「ふう……、かなり歩いたな」
「にゃにゃあ~」
 探すことに必死になっていたから全く気付かなかったが、今日1日で橘町内を2周は確実に歩いた。こんなに歩いたのは久しぶりかもしれない。おかげで足はすっかり棒になっている。
「じゃあ、夕食の買い物をするかミミ。ミミが好きなものはなんだろうか? お魚?」
「にゃにゃあ!!」
 黄色い声で返答するミミ。この笑顔に、この反応、いかにも子供らしい。
「決まりだな。だったら、お寿司にするか」
「にゃにゃあ~い!!」
 ミミは喜び跳ねる。毎日大したものは食べていないから、俺もたまには寿司が食べたかったところだ。高いものは買えないが、1パック380円程度のものぐらいなら問題ないな。
 それにしてもなんだろうか、この湧き上がる感情は。ミミと出会ってからまだ1日も経っていないのに年の離れた兄妹というよりも、妙の言っていたように親子のような情念すら感じてしまう。
 もし、保護者と思われるデュタという少年の元に帰すことが出来たとしたら、再び出会うことが出来るのだろうか? 今日のように一緒に歩くことが出来るのだろうか?
 いかんいかん!! どうしてこんなことを考えているんだ、俺!! もしかして、こんな小さな子に気でもあるのか!? それは人として大問題だ!! 完全にロリコンだ!! 完全にペドフィリアだ!! 完全に犯罪者だ!!
 昨日は少年に対して一目惚れして、今度は幼児に恋愛感情を抱く。俺が相当の物好きで、武士以上の惚れ症だとは思わなかった……。
 馴染みのスーパーへと向かう道中で、自らの変態的趣向に気付き酷く嫌悪をしてしまった。ああ……、少なからずともこういうことではまとも人間だと思っていたのに……。
 と、俺は非常に情けない気持ちになっていたが、そのようなことを考えているような事態ではなかった。
「にゃあ……」
 突然、俺の服の裾を弱々しく引っ張ったまま、その場にへたれ込むミミ。その表情は、元気一杯だった先ほどとは違い、苦悶そのものであり、声も弱々しい。
「お、おいどうしたんだ!?」
「にゃ、にゃあ……」
 俺はミミの額に触れた。
 熱い。まるで高熱病に罹ったのかと思われるぐらいに熱い。
 いや、それだけではない。霧のように発せられる湯気、呼吸するのも辛そうな息遣い、滝のように全身から流れる汗、腕に伝わる全身の震え。唐突も無い体調の異変、これを異常事態と言わずして何と言う。
「にゃああ……、にゃあ……」
 へたれ込んで動けなくなっていたミミだが、ふらふらと立ち上がる。今にも倒れそうなほどに覚束ない足取りで歩みを進めながら。
 ミミの向かった先は、大通りから外れた小道。人気が無く、街灯なども切れかかっており、大通りに比べて殺風景で寂れている。子供一人で通るにはかなり心細い道である。
「にゃ、にゃああ……、にゃ……」
 壁に体を擦り付けながら歩くミミ。一歩歩けば姿勢を崩し、また一歩歩けば転びそうなほどに傾く。その様は、痛々しいという言葉以外ない。
「そっちへ行ってどうする!?」
 俺はミミを止めようと肩に触れるが、歩みを止めない。まるで、俺の言葉が聞こえていないようだ。
「にゃ……」
 そして、薄暗がりのT字路を曲がりきったところで、ミミはついに倒れてしまった。
「にゃあ……にゃ、にゃ……」
 アスファルトの地面で小さく丸まり、止めどなく涙を溢れさせ、ガタガタと体を震わせる。声もさっき以上にか細く、殆ど聞き取れないほどだ。
「おいミミ!! 大丈夫か、大丈夫か!!」
 俺はガタガタと震えるミミの体を揺する。しかし、相変わらず反応は無し。
 もうネコ耳がどうのネコの尻尾がどうの、宇宙人がどうのどころの話ではない。ミミの正体がバレてもいいから、病院に連れっていてどうにか治してやらないと!! 内科か、外科か!?
 錯乱気味であったが、冷静になることを心がけながら、ミミを病院に連れて行くために背負った。
 重たい。
 このくらいの子を背負ったことなどないが、幼児にしては明らかに重たい。
 いや、おかしいのはそれだけではない。
 それにミミの体の中から妙な音が背中越しに伝わる。骨が軋むのような音というか、体内から聞いたことのないような音が鳴り響く。
 ミミの身体に何が起きているんだ?
 俺は確認のため、背負っていたミミをアスファルトの地面にゆっくりと傷つけないように置いた。
 大きい。
 さっきまでのミミに比べて、どう見ても一回りほど大きくなっている。パッと見、小学生低学年ぐらいの大きさだ。どうして、こんな不可解な現象が起きた? これから何が起こるというのか?
 その不可解な現象は俺の意思とは関係なく進行していく。
 ミシミシと痛そうな音とともに大きくなっていくミミの体。それは小学生低学年ではなく、もう小学生高学年ぐらいの大きさだ。
 それに伴い、ビリビリと布の千切れる音が。妙の用意したお洒落な服のサイズが成長に合わず、耐久限界を超えて破れ、白い肌が露わとなっていく。
「うにゃあ、うにゃああ……」
 ただただ呻き声をあげるミミ。それに対して、俺はどうすることも出来なかった。常識的に有り得ない状況に、動揺のあまり思考が停止してしまったのだから。ミミの保護者を探すと約束した男としてはあまりにも無力で、とても情けない話だが。
「にゃあ……うにゃあ……・うにゃあ……」
 そして、何度かの小さく悲痛な呻き声をあげた後、ミミの身体の変化は終わりを告げた。それと同時に糸の切れたマリオネットの如く意識を失ってしまった。
「ど、どうなっているんだ……」
 俺は大きくなった半裸のミミを心配げに見つめる。
 憶測だが、150cm近くあるかもしれない。10歳近くは一気に歳を取ったような気がする。その割には、胸はかなり控えめな気がする。多分、Aカップ程度かもしれない。
 いや、バストサイズのことなどどうでもいい。それよりも、謎の急成長以上に特筆すべき点があった。
 先日、デュタという美少年が見せた画像の少女そのものだ。
 右目は青眼、左目は赤眼のオッドアイ、、両頬に書かれたピンク色の二本線、独特のデザインをした髪留めとピンク色が特徴的な短めのツインテール、マニアックに言えばツーサイドアップだろうか。そして、ネコ耳とネコの尻尾。服装こそは違うが、それ以外は寸分違わない。
 やはり、デュタが探していた少女はこのミミだったのか。どうやってあんなに小さな子供から、このような姿に変わったのか理解など出来ないが。
 だが、今はそれを考えている場合ではない。ミミの安否の確認が最優先だ。ひとまず反応を確かめなければ。
「おい、ミミ大丈夫か!? しっかりしろ!?」
 俺はミミの熱い体を優しく揺らす。一刻も早く、意識を戻してくれ。
「う……ニャ……?」
 幸い、すぐに反応をしてくれた。良かった……。
「うにゃ……にゃ……?」
 右目の青眼と左目の赤眼のオッドアイで虚ろに見つめるミミ。
「うにゃ……、にゃあ……にゃあ……」
「俺だ、大和だ。聞こえるか? ミミ、体調はどうだ?」
「うにゃ……」
 ミミは、俺の目の前に手を見せて……。
「え?」
「うにゃ!!」
 爪を立てた五本の指で、俺の顔を斜めに引っ掻いた。
「ほわっちゃあ!!」
 顔に作られた五本の赤い斜め線。痛さのあまり、俺は間抜けな声を吐いてしまった。
「一体、何をするんだ!!」
 心配していたのに、いきなり引っ掻き攻撃とは。裸を見たのは悪いかもしれないが、攻撃してくることないだろ。
「にゃあ? にゃにゃあにゃあー!!」
 何を言っているか分からないが、ミミは甲高い鳴き声で酷く興奮していた。そして、その喋り口調からして上から目線であることは間違いない。
 さっきまで可愛かったミミの態度が変わったんだ? 見た目だけでなく性格までまるで別人となっている。ますますワケが分からない。
「にゃあ……」
 半裸のミミは立ち上がり、ゆっくりと立ち上がり、大通りへと向かう。
「おいちょっと待て!!」
 当たり前だ。ネコ耳やネコの尻尾はともかく、裸で大通りに出られたら大事になってしまう。それに、こんな姿で歩いていたら風邪をひいてしまうし、体調は大丈夫なのか?
 俺はミミの止めようと肩に手を置く。だが、ミミは「にゃあ!!」といかにも不機嫌そうな声で手を払われてしまった。
「そんな格好で出歩くなって!!」
「にゃあ……」
 ギラリと睨みを利かせるミミのオッドアイ。それは年相応の女の子のものではなく、所謂、ガンを飛ばすというやつだ。が、ミミの感情や表情には威圧感が込められており、まさにヤクザ顔負けである。
「な、なんだよ、おい。俺は、お前のことを気遣って止めようとしたのに」
「にゃあ? にゃにゃあにゃにゃあにゃにゃあ」
「何を言っているか分からないけどさ、いい加減にしろよ!!」
 さっきからずっと我慢していたが、もう限界だ。
「今までこっちは、色々と苦労したんだからな!! 食事だって!! 風呂だって!! 寝床だって!! お前の保護者探しもさ!! 少しは感謝ぐらいしろよ!!」
 事故で連鎖爆発した火薬庫のような怒りの炎。小さいミミだったら感謝するのに、どうしてこいつは態度がでかい!?
「にゃにゃあにゃあにゃあにゃあ!! にゃにゃにゃあ!!」
「ああ、勝手にどっか行けよ!! 俺はもう知らん!!」
 俺は腹に決めた。もうこれ以上、こいつと関わるのは止めよう。
「にゃにゃあー!!」
 ミミも怒りのゲージが振り切れてしまったのか、ミミは怒声をぶつけた後、本当に去ってしまった。大通りの喧騒とさほど変わらぬ大声は鳴りを潜め、いつもと変わらぬ寂しいだけの裏通りへと戻る。
「ったく……」
 なんなんだよ、アイツは。保護欲みたいなのもあったかもしれないが、困っていたから助けてあげただけなのに。それに対して、ミミも感謝していたのに……。
 それなのに、あんな傲慢な態度。まるで恩を仇で返されたような気分だ。一日中、歩き回った俺が馬鹿だった。ここでぶちまけて清々したよ。今日は上手い飯でも買っても、徹夜でゲームでもしよっと!!
 しかし、怒りの感情の他にも幾分かの不安の感情も混ざっていた。
 こうやって怒りに身を任せたとはいえ、ミミはこれから先どこへ行くのだろうか? 自宅に戻る方法やデュタという美少年に出会う術があるならともかく、もしそのような手段も無ければ、昨日のように路頭を彷徨うしかない。最悪……。
 いやいや、ああ言った以上はこれ以上関わる筋合いなどない。それに、俺が助けたところでどうなる? どうにもならないだろ。
 感情入り混じり入り乱れ、取るべき選択肢がどれか分からない。このまま放っておくか、それとも、ミミを助けてやるか……。
 だが、長考する暇など無かった。
「にゃあ!!」
 近くから聞こえるミミの叫び声。それも、さっきの怒鳴り声とは質が違う。
「ミミ、何があったんだ!!」
 俺はミミの去った方向へと向かったが、走るまでもなく答えはすぐに分かった。そして、直感的に曲がり角で身を隠した。
 裏通りのT字路を曲がった先、そこにはミミの進路方向を立ち塞がる形で謎の三人組が立ちはだかっていた。
 一人は、2m超はある茶髪の厳つい巨漢。
 一人は、前髪が目深なボブカット紫髪の少女。
 一人は、ミミよりも若干背の高い銀髪童顔の少年。
 威圧感溢れる三人に共通する特徴が二つあった。
 一つは、黒づくめのスーツを着ていること。
 もう一つは、ミミと同じようなネコ耳とネコの尻尾と頬の線が生えているということ。
 そして、この状況から言えるのは一つ。三人組がミミの敵だということだ。
「あの三人は、何者なんだ? どうして、ネコ耳とネコの尻尾がついているんだ?」
 一つ目の衝撃(ファースト・インパクト)、ネコ耳少女、ミミとの出会い。
 二つ目の衝撃(セカンド・インパクト)、ミミの急成長。
 三つ目の衝撃(サード・インパクト)、謎の三人組の登場。
 俺は次々起こる衝撃的で不可思議な展開に思考が追い付いつかない。頭の中は、パンク寸前だ。
 しかし、これらはこれから起きる出来事の序曲に過ぎないのであった。

 どうでしたか、今回の彼女たちの極秘事項(トップシークレット)は?
 ここ3話はあまり話は進展していませんでしたが、第2話のラストで一気に進展させてみました。ミミの身体の変化に、黒づくめの服を着た三人組の登場。とても文章力があるとは言えませんが、自分なりに盛り上がる要素を付け加えながら書いたと思います。
 特に、体に異常が起きたミミの苦しさをどう表現しようかかなり困りましたよ。体調の変化による体の異常、ミミの行動、夏目大和の反応……。そういったものをどうやって読み手に伝わらせるか、考えながら書いていたもんですから、かなり頭が痛くなりましたよ。ホント、イラストの時もそうだったけど、物を作るって難しい物だ。
 完成までにまだまだ遠い彼女たちの極秘事項(トップシークレット)。次回は、先に書いたようにしばらくお休み。第3話が完成してから、少しずつ公開したいと思います。勿論、その時もよろしくお願いします。