今週から第14話!!

 更新ペースがあまり早くない蔵間マリコです。
 月曜日ですけど、更新しますよ~。貧乏高校生の夏目大和と、ネコ耳宇宙人のデュタ、ミミとミューナとの共同生活を書いたオリジナルのSFファンタジーライトノベル『彼女たちの極秘事項(トップシークレット)』を。
 さてさて、今週からは待望(待ち望んでいる人がどれだけいるか怪しいけど)の第14話!!新入生の機械人形(オートマタ)のアイの東雲学園での問題も無事解決した大和たち。これで無事解決と思いきや、今度はアイがとある人物に会わせたいと大和たちに頼む。さて、その会わせたい人物とは?そして、そこで待ち構えている出来事とは!?
 と、ちょっと前回までのおさらいをしました。さて、今回の彼女たちの極秘事項(トップシークレット)はどうなることか?あまり上手な文章ではありませんが、読んでくれると非常に有り難いです。それでは、今回もどうぞ。
                    第14話 鋼の心臓(アイアン・ハート)(1)

「東雲大学病院前、東雲大学病院前」
 俺たち3人はアイの導くままバスに乗って15分、辿り着いた先は郊外エリアにある大学病院だった。
 東雲大学病院は、国内でもトップクラス、いや世界的にも有数と言われるほどの大病院である。最新鋭の施設は勿論のこと、指折りの技術を誇る医者、並の病院では絶対に有り得ないサービスなど至れり尽くせりの施設となっている。そのため地元の人間が利用する病院というよりも、政界や芸能界の著名人、難病を抱える疾患者などといった特殊な病院になっている。
 そして、この病院の隠された顔として、宇宙人の病気や怪我を診察および治療を行える数少ない施設としても重宝されている。実際、崩落事故に巻き込まれたあの日、ネコ耳宇宙人のミミとイヌ耳宇宙人のリリィも大事がないかを調べるために緊急的に診察をしてもらった。その時は、幸いにも捻挫や打撲、切り傷などといった程度で済んだが、この病院がなかったらどこで診察してもらえば良かったのか困ったぐらいである。
 しかし、こんな大層な施設に呼ぶとは、アイの持ち主(マスター)、いやアイの母親と妹とはどういう人物なのだろうか?
「アイ、本当にここで間違っていないだろうな?」
「ひ、酷いです!! アイは方向音痴であっても、そこまで耄碌していないです!!」
 アイは両手をぎゅっと握り、涙目で訴える。
「そうだよ、アイちゃんがそんなことしないに決まっているじゃないの!!」
「大和、アイのことを信じられないと言うのか?」
「そうじゃないけどさあ……」
 デュタもそらもよってたかって俺のことを集中攻撃する。酷いな、冗談で言っただけなのに。
「まあ、夜までにそこまで時間がない。さっさと用事を済ませるぞ」
「はい、分かりましたです」
 そう言うと、アイは病院入ってすぐの受付けへと行った。
 病院が病院だけに、すぐに受付けが済むというわけではなさそうだった。下手したら1時間近くかかるかもしれない。
 俺たち3人は待合室の椅子に座りながら、80インチモニターに映し出されている当たり障りのない教育番組を眺めた。
「大和くん。もしかして、アイちゃんの合わせたい相手って、病気なのかな?」
「当たり前だろ。そうじゃなきゃあ、こんなところに呼ぶなんてしない」
「そうだよね」
 ただ、俺もこんな所に呼ばれるなんてとても思ってもいなかった。困っている以上は助けるつもりなのだが、場合によっては担げない用件かもしれない。その時は、きっぱり断るつもりである。
「夏目大和さん、デュトナ・サイベリアスさん、星野そらさんですね」
「はい、そうですが」
 俺の左手側から現れたのは、ミディアムヘアの女性看護士だった。
 ただし、この女性看護士は普通の女性看護士ではない。両側頭部にアンテナ型の機械耳、機械人形(オートマタ)の女性看護士だ。
「掌をこちらのパネルに3秒以上、タッチしてください。それとこちらの網膜認識装置で目を当てて、声紋認識装置に名前を呼びかけてください」
 テキパキとした印象を受けるものの、どこか機械的な動作と雰囲気を漂わせる女性看護士の声。さつきやアイとはどこか違う。いや、これが普通の機械人形(オートマタ)なのかもしれない。
 俺たち3人は、特に手間もかけることなく、3分と少しの時間で作業を済ませた。
「確認ありがとうございました。こちらがカードキーとなります。名前に不備はないでしょうか?」
 女性看護師は、どこか豪奢な雰囲気のする青と白のカードキーをそれぞれ1枚渡した。カードには、病院名とカードキーの持ち主の名前、8011の部屋番号が書いている。
「いや、特に問題ないけど」
「ありがとうございました。面会時間、病院内でのマナーをよろしくお願いします」
 そういうと、女性看護士はどこかへと消えてしまった。
「指紋に、声紋に、網膜に、カードキー。つまらない世の中になったものだな」
「地球(セラン)人というのも難儀なものだな」
「こんなに厳重なのは、ここぐらいだ」
 俺は文句たらたら言ったが、心の中では半ば理解していた。この病院の警備が無警戒だったら、要人の多い病院で何が起こるかぐらいは。
「受け付け終わりましたです」
 いつの間にか、アイが戻っていた。
「随分と早いな。10分も待たなかったぞ」
「はい、ここの病院の受付けはとても早いんです」
「そうか。そりゃあ都合がいい」
 椅子から立ち上がった俺たち3人は、8011号室へと向かった。
 ひっきりなしに行き交う医者や患者、踏みしめるたびに軽く木霊するリノリウム音、高速エレベーター、病人用の動く歩道、時間が経つに連れて変わる風景の映された壁。病院という神聖な世界は、俺たちの生活圏とは全く違ったものだと肌身に感じる。
「皆さま、ここですよ」
 そんなことを考えているうちに、目的の8011号室に到着した。
 表札代わりとなるモニターには、『如月』の名が。
「カードキーを挿して、指紋と声紋と網膜をチェックしてくださいです」
 俺はアイに言われるがままに、それらのチェックを行った。
「何よ、アイ。今日はこなくても良いって言ったでしょ。ていうか、その3人は誰?」
 モニター付属のスピーカーから幼い少女の、それでいながらもどこか不機嫌そうな声が伝わってきた。
「3人とも用事があるのです。それもとってもとっても重要なお話があるのです」
「その重要な話って? まさかくだらないことじゃないでしょ?」
「それは話してみないと分からないです」
「何言っているのよ? でも、暇だったし、いいわ」
 そういうと、ロックされていたドアがスライドし、ようやく声の主をお目見えする権利を得た。ここまで辿り着くのに5つの工程。相当面倒なシステムである。
「おじゃましまーす」
 俺に続くかのように、そらもデュタも「おじゃまします」と入室した。
 だが、入った途端に少し異様な光景が目に入った。
 8床ほどのベッドが入るであろう部屋に、端にポツリと1床置いてあるのみ。
 その一方で物らしい物はあまり置いておらず、生活感というものをあまり匂わせない。あるとすれば、棚の上に置かれた数冊の本、ノートPCぐらいだ。
 そして、俺たちを招き入れた部屋の主はベッドで横になっていた。
「あんたたちなのね? 用事があるっていうのは」
 部屋の主は、アイの妹は、中学生であろうと思われる少女だった。
 色素の薄い茶色の髪の毛を纏めたお団子結びに、くりくりっとしたアーモンドのような大きな黒目、あまり健康的には思えない肌の白さ、力強く触れたら崩れそうなほどに思える華奢な体つき。文字通り病人だが、少女特有の可愛らしさは全く色褪せていない。
「いや、俺たちは呼ばれてきたのだが……」
「あはは、そのくらい知っているわよ。だって、私が呼んだんだからさ」
 少女の言葉はとても攻撃的だった。まるで喧嘩をしてくださいと言わんばかりに。
 だが、相手はどう見ても年下の女の子。出会って早々、爆発するのどうかと思う。ここはしばらく、我慢しなければ。
「忘れていたね、私の名前は如月樹里(きさらぎ じゅり)。あんたたちの名前は?」
「あんたって言うのを止めろよ……。俺の名前は、夏目大和(なつめ やまと)だ」
「私は、星野そら。よろしくね」
「私の名前は、デュトナ・サイベリアスだ。デュタと呼んでくれ」
 苛立っていた俺とは対照的に、そらとデュタはストレスなど微塵に見せていなかった。
「夏目に、星野、デュタ。夏目に、星野、デュタ……」
 病床の少女は、まるで俺たちがいないかのように復唱する。
「さっきは、ごめんね」
 先ほどの敵意はどこやら、今度はどこか申しわけなさそうだった。
「私、一日中病院にいるからちょっとイライラしていてね。だから、つい……」
「い、いや、謝ってくれたらそれでいいんだよ」
 180度転換の態度に、俺は少し動揺していた。気難しい性格ではあるけど、根は優しい子のかもしれない。
「だから、反省の証として、これあげる」
「なんだこれ?」
 それはリボンとシールがあしらわれ、包装紙に包まれた箱だった。サイズはお歳暮などでもらえるクッキー缶ほどの大きめの箱だ。
「プレゼント。あなたたちが来ると思ってね」
「いきなりこんな物をもらってもいいのか?」
「うん。できれば、ここで開けてほしいの」
「分かった」
 俺は少女の言うとおり、俺はその場でプレゼント箱を開いた。一体何が入っているのだろうか? 食べ物? もしくは、アクセサリー類? どうせなら、前者であってほしい。
 だが、箱の中身はどちらでもなかった。
 プレゼント箱を開けた瞬間、俺たちの前に待ち構えていたのは5連続の爆発音と、紙吹雪、そしてつんと臭う火薬の香りだった。
「あびゃあっ!?」
「きゃあっ!!」
「ぴゃあっ!?」
 俺とデュタとそらは思わず跳ね除け、尻餅をついてしまった。
「あはははは!! 引っ掛かった!! 引っ掛かった!! バーカ!! バーカ!!」
 少女は腹を抱え、涙を堪えながら大爆笑した。それはもう、この部屋に他の患者がいたら、確実に部屋を追い出されそうなほどに。いや、こんな悪戯(いたずら)をしている時点で追い出さなければいけないのだが。
「樹里!! お客さんを悪戯(いたずら)をしたら駄目です!!」
「なにお母さんみたいに説教しているのよ? 私が楽しいんだからいいじゃない」
「樹里が楽しくても、みんなに迷惑がかかるから駄目です!!」
「ちぇっ……」
「ちぇっ、じゃないです!! ちゃんと謝りなさいです!! そうじゃないと、買ってきたたぬきのケーキをあげないです!!」
「わ、分かったよ、もう……。ごめんなさい」
 腰を抜かした俺とデュタとそらを他所に、アイは樹里に説教を始める。学校ではどこか自信なさげな印象を受けるが、今のアイはそれと対照的である。
「ご、ごめんなさいです。妹はいたずら好きで、こうやってよく誰かを驚かせるのです。先に言っておけば、こんなことにならかったです……」
「あ、あれはそういうものだったのか?」
「そ、そうです……」
「良かった……、爆弾ではなくて……」
「さ、流石にそれはないだろ」
「樹里ちゃんって、とてもやんちゃなんだね……」
「やんちゃどころじゃないんだが。親も気苦労耐えんだろうな」
 妹の愛美(あゆみ)も何かと苦労がかかった。しかし、それは一般的な範疇の話。樹里という名の少女はそれに当てはまらない。こんなのが妹だったとしたら、胃薬常備間違いない。
「しかし、どうして俺たちがこんな所に呼ばれたんだ?」
「夏目さん、それは今からお話を……」
 インターホンの音が鳴った。
「私だ」
「お姉ちゃん!!」
 少しくぐもった女性の声に反応した悠璃は、備え付けのノートPCを確認した。ここからでは見えないが、モニターにでもなっているのだろうか。
「この様子だと、あいつらが来ているのか?」
「どうして分かるの?」
「お姉さんにかかれば、そのくらい分かるもんだぞ」
 女性の声は満ち溢れるどころか、どこか自画自賛的な雰囲気を匂わせるものだった。妹が妹ならば、姉も大概な性格なのかもしれない。
「それはともかく、ここを開けてくれないか?」
「うん、分かった!!」
 樹里の遠隔操作によって開かれるドア。
 そのドアの先、そこには驚くべき人物が立っていた。
 ボサボサのポニーテールに、フレームの細い黒縁眼鏡、清廉さを漂わせる白衣、目のやり場に困る赤いボディコン。
 そうだ、その人物は。
「えっ、えーーーーーーっ!! え、えぐっ、えぐさあぁあああぁっ!?」
「江草先生がどうしてここに?」
「ということは……」
「そうです」
「そうだ、私がお前たちを呼んだ」
 クラスの担任である江草真来菜(えぐさ まきな)の来訪に俺は再び腰を抜かし、尻餅をついた。
「お母さん、お帰りなさいです」
「お姉ちゃん、いつもより少し早かったね」
「ああ。お姉ちゃんは、樹里の顔を一秒でも早く見たくてなぁ。今日は仕事を大急ぎで済ませた。アイも私の頼みを受けてくれてありがとう」
「お母さんの頼みごとを守るのは、娘として当然です!!」
「えーっと、えーっと、これは……」
 俺は今ここで起きている事態に、思考回路がクラッシュしてしまった。そして、それはそらも同じである。
「夏目、デュトナ、そら。ここで話すのは難だから、場所を変えようか」
「は、ははは、はいっ!!」
 自分自身何を言っているのか分からなかった。

 どうでしたか、今回の彼女たちの極秘事項(トップシークレット)は?今回は、アイの会わせたい人物の登場と思わぬ人物との遭遇を書きました。
 自分としては、この場面は色々と力を入れてみました。第14話の冒頭だからというのもありますが、東雲大学病院という場所自体が作中では事実上の初登場ですから。だから、色々と環境が変わるのでそこを意識しながら書いてね。
 中でも力を入れたのは、東雲大学病院という場所がどんな場所か、大和たちを招き入れた人物のキャラクター像。前者については、近未来であることを意識して、いかにもそれらしい設備を取り揃えた病院にしてみました。特に機械人形(オートマタ)を主役にしている回だけに、業務用の機械人形を登場させて、近未来的かつ今まで登場した機械人形との差別化を図ってみました。
 それと新キャラクターの如月樹里。まだまだ多くは語るつもりはありませんが、自分としてはこのようなキャラにしたのは、やはり初登場ということでインパクトがあるものにしてみました。いや、別に樹里に限らないですけど、基本的には初登場シーンは出来るだけインパクトがあるようにと心掛けています。大和は旦那さま発言をした妙然り、夕日に黄昏れていたデュタ然り、半裸で用具倉庫で見つかったミミ然り、倒れているところを助けたアリス然り。

 思い描いた世界が広がるオリジナルのSFファンタジーライトノベル。
 さて、次回はいつものように日曜日更新予定。意外な人物とであった大和たちは、果たしてこれからどのような試練と立ち向かうのだろうか?そして、その先に待ち構えるものは?それは見てのお楽しみ!!