久々に更新!!

 なかなかペースが上がらない蔵間マリコです。
 1ヶ月ぶりぐらいですけど、やっと更新できますよー!!貧乏高校生の夏目大和と、ネコ耳宇宙人のデュタ、ミミとミューナとの共同生活を書いたオリジナルのSFファンタジーライトノベル『彼女たちの極秘事項(トップシークレット)』、略してカノゴクを。
 更新が随分遅くなってすみませんねえ。だんだん執筆スピードが遅くなっているというのに、仕上げの部分で更に遅くなっちゃいまして。自分もどうにかして早く完成させたいとは思っていたんですけど、なかなか上手くいかず……。もう連載に数年もかけているのに、初めて書くライトノベルが長編だったというのがちょっと失敗だったかもしれません。ただ、それでも完成させることに意義がある。完成させて、初めて自分が変われるのだから。
 とまあ、前置きはこれぐらいにして、そろそろ本題に入らせてもらいます。先に言っておきますが、かなり稚拙な文章です。それでも読んでくれると非常に有難いです。あと、感想やアドバイスも書いてくれるともっと嬉しいです。
 というわけで、今回のカノゴクをどうぞ。

第21話 帰郷(1)

 デュタは顔を真っ赤にして、涙を堪えていた。
「だから言ったじゃないか、お前じゃあ無理だって。何のために注文したんだよ」
「兄貴。そんなこと言ったら、デュタさんが傷つくでしょ」
「デュタちゃん、そんなに我慢しなくてもいいから……」
「デュタ、にゃかないで」
 俺たち三人はデュタを心配するが、デュタは絶対に諦めようとしなかった。
「こ、こんなの全然大丈夫!! この程度のもの、どうってことない!!」
 デュタは、目の前の敵をまじまじと見つめる。
 鉄板で熱され刺激的な香りを放つソースに、クレープ状の薄生地に包まれた野菜と豚肉とそばとうどんと崩した目玉焼き。デュタは広島県の県民食であるお好み焼き、それもそば玉Wちゃんぽんを相手に死闘を広げていた。
「う~~~っ」
 声にならない声で悶絶するデュタ。
「猫舌なんだから、冷たいものでも頼めば良かったのに……」
「ミミ、れいめんだいすき!!」
 ミミは、尾道ラーメン、広島つけ麺、汁無し坦々麺に並ぶ広島4大麺料理の一つである、呉冷麺に舌を鳴らしていた。
 甘酸っぱいタレが平うち面やキュウリに絡まり、冷やし中華とも、冷麺とも違った味わいを生み出す。まさにこの時期もってこいの麺料理である。
 ちなみにそば玉のWはそばが二玉入ったお好み焼きのことであり、ちゃんぽんはそばの中にうどん玉が入ったものである。
「デュタさん、別皿に取り分けて少し冷めてからでもいいんだよ」
「い、いや、これが本場のお好み焼きという食べ方ならそれに倣うのが礼儀というものだ。だ、だから、私は、熱っ!!」
 即座にソーダ水を一気に飲み込む。それも一度に全部。
「はあぁ~っ」
「なにおっさん臭い溜息を漏らしているんやら……」


 結局、お好み焼きを食べ終えたのは15分後だった。
 最後は熱さに耐え切れず、取り皿に分けて食べることになった。その時のデュタの顔は、とても悔しそうな顔で涙すら溢れそうだった。
 そして今は、バスで実家へと戻っている。
「ミミちゃん、初めての広島は楽しい?」
「ミミ、とってもたのしかったにゃ!! ひろしまじょう、たのしかったにゃ!!」
 帰省して間もない広島市内の観光名所巡りに、大満足なミミ。やや駆け足気味だったが、急いで案内をした甲斐があった。
「しかし、地球(セラン)でもあのような悲痛な戦争が起きていたとは。我々、アル・ビシニアンだけでなく、地球(セラン)人も重たい歴史を歩んできたのだな」
「そうだね……。でも、これから一生懸命頑張っていけば、争いも減っていくと思うよ」
「そうだといいな。我々も負の連鎖を断ち切ることが出来る日が来たらいいのだが……」
 そらは知らないだろうが、デュタの言うことはとても重たかった。
 ネコ耳宇宙人とイヌ耳宇宙人の争いの末の破滅。後輩の瀬良リリィもイヌ耳宇宙人であり、一時期そのことでひと悶着があった。今ではそれを感じさせないほどに仲のいい関係だが、それ以外の関係となると違ってくるだろうし、規模が大きくなればそうはいかないかもしれない。そして、どこか遠くで互いに恨み続け、互いに血を流し合っているかもしれない。
 ただ、せめてデュタやミミ、リリィの前だけではそのような悲劇だけは起きてほしくない。そう願いたいものだ。
『串田(くしだ)ー、串田ー。降りる方は、運賃箱へお願いしますー』
「デュタ、ミミ。降りるぞ」
 俺たち5人は串田のバス停で降りた。
 串田は広島県の中心部からかなり近い地域であり、中流層の者たちと大勢の公務員が住む町である。町の特徴としては、20棟近く連なる県営アパートに、150年以上の歴史を持つ小学校と、県営のスポーーツセンターがあることだろうか?
 しかし、俺はこの町があまり好きではなかった。
 変わらぬ町並みに、変わらぬ雰囲気。それが穏やかといえばそうかもしれないが、俺はそれが嫌だった。だから、俺はこの町を出て、目まぐるしく変わる東雲町に近い場所へと一人暮らしを始めたのだ。実際、東雲区は俺の肌に馴染んでいる。貧乏で不便な生活であるが、刺激的で最高の場所だ。
「相変わらずだな、この町も」
「それがいいじゃないの。とってもゆっくりしていて」
「そうか?」
「大和、あるものは大切にしたほうがいいぞ」
「うにゃ」
 納得こそはいかなかったが、これ以上言うと面倒事になりそうなので言わなかった。
 それに世間話をしているうちに、俺たちは自宅に到着したからだ。
「ここが大和の実家か。とても風情のある家だ」
「風情なんてあるもんか。建売りの一戸建てのどこにでもあるような家だ」
「そうなのか?」
「それとデュタ、ミミ」
 俺は二人を呼び寄せて、歩美に聞かれないように小声で話した。
「絶対にネコ耳宇宙人であることをバラすなよ。バレたら、大事になるかもしれないぞ」
「分かっている。私もミミもそこは抜かりない」
「うにゃ!!」
 俺は若干の不安を抱きつつも、自宅のドアを開けた。
「ただいま」
「おかえりなさい、大和、歩美。それに……」
 帰って第一声とともに現れたのは、パッと見20代後半に見た目をしたロングヘアーの女性。
 そうだ、この人が俺のお母さん、夏目響子(なつめ きょうこ)だ。
「夏目大和さんの部屋に居候をさせてもらっているデュトナ・サイベリアスです」
「ミミは、ミミだにゃ!!」
「そうだったね、デュトナさんに、ミミちゃん。あれ? メール写真で見た時に比べて、なんか幼くなった気が……」
「そ、そうなんだ……。上手く写真が撮れなかったのかあ? あははは」
 実際は東雲から広島での移動の際に、ミューナの退行化現象が始まったからだ。幸い替えの服は用意をしていたが、帰宅した時にどう言えばいいのかと悩んでいた。しかし、その心配をする必要はなかったようだ。
「もう9時過ぎているけど、夕食は食べた? あと、お風呂も沸いているわよ」
「夕食なら食べて帰ったから。風呂なら落ち着いてから入る」
「大和、お母さんに話すことがあるでしょ」
「別にそんなものないから」
「ちょっと、待ちなさい!!」
 俺はこれ以上話すこともなく、2階の俺の部屋と戻ろうとした。
 その時だった。
「帰ったか」
「……」
 階段で白髪まじりの眼鏡をかけた男とすれ違った。
 俺は何も応えることなく、そのまま2階へと上がった。
 あの男は俺の父、夏目清(なつめ きよし)だ。
 俺がこの家を出た最大の理由、俺の気持ちなど全く考えない時代錯誤な頑固親父だ。
「君たちが、息子のところで世話になっている二人かね? 私は……」

 俺は自室に入るや否や、ベッドに突っ伏し、クーラーを16℃設定で起動させた。
 この家から橘町へ引越ししてから1年半、この部屋もあの時とと何ら変わっていない。
 ヨーロッパプロリーグのポスターに、漫画の単行本と参考書が詰まった本棚、小学生の頃に作ったプラモデル、最新ゲーム機ハードとゲーム数本……。
 懐かしいといえばそうかもしれないが、それ以上に居心地が悪かった。
 まるで自分の居場所がない、俺で部屋だというのに他人の部屋にすら思えてしまう奇妙な感覚だ。
「やっぱり、帰らないほうが良かったかなあ……」
「それは違うと思うよ、大和くん」
「わっ!?」
 外側から突然開けられる窓、その窓の先にはそらがいた。
「アイスいらないの? いらないんなら、大和くんのも食べちゃうよ」
「開けるんなら、ノックぐらいしろよ」
 俺は窓越しに手を伸ばして、アイスを取った。
「こうやって窓越しから話すのなんて、小学生以来だね」
「俺たちはもうそんな歳じゃないだろ」
「歳なんて関係ないよ、話したいことがあるのには」
 クランチクッキーとチョコレートでコーティングされたアイスバーをしみじみと味わう。中のバニラアイスとのバランスがたまらない、これぞ夏の味。
「大和くん、お母さんとお父さんとあっちでの話をしたの?」
「……」
「やっぱりね。お母さんにも、お父さんにも、色々と迷惑をかけているんでしょ。ごめんぐらい言ってもいいじゃないの」
 そらは呆れ顔で溜息を吐いた。溜息を吐きたくなるのは、こっちだ。
「なんで俺が謝らないといけないんだよ」
「大和くんの親不孝者」
「親不孝で結構」
「でも、実家に帰ってきたんだから、全くその気がないというわけじゃないんだよね? そうじゃなきゃあ、家に帰るなんて言わないよ」
「あ、あれはお前たちが決めた罰ゲームじゃないか!!」
「そうだけど、私たちは強制していたわけじゃないよ? 行かなかったら、軽蔑していたけど」
「む……」
「でも、大和くんならきっと大和くんのお母さんとお父さんとまた仲良くなれるよ」
「そらー、夜も遅いんだからお風呂入りなさいー!!」
 そらの家から、そらの母親の声が聞こえた。相変わらず高い声だ。
「大和くん、私、そろそろお風呂に入るから。お母さんとお父さんとの問題のことは考えておいてね」
「分かった……」
 俺は渋々答えると、そらは窓とカーテンを閉めて、自分の部屋から去った。
「はぁ……」
 結局、まともに反論することができなかった。完全に俺の負けだ。
 意識はしていなかったが、俺は両親に謝りたいと心のどこかで思っているのだろうか?
「それはない、絶対にない」
 俺はアイスバーの包み紙と棒をゴミ箱へと投げ入れた。

 どうでしたか、今回のカノゴクは?
 次回は予定がない限り、来週の日曜日更新予定。実家へ帰宅した大和だが、果たして親子の縁を修復させることができるのだろうか?そして、デュタやミミは?それは見てのお楽しみにということで。