亀の歩みでも、確実に進めないと!!

 少しでも面白いものを書きたい蔵間マリコです。
 さてさて日曜日ですので、いつものコーナーを更新しますよー。貧乏高校生の夏目大和と、ネコ耳宇宙人のデュタ、ミミとミューナとの共同生活を書いたオリジナルのSFファンタジーライトノベル『彼女たちの極秘事項(トップシークレット)』、略してカノゴクを。
 いや~、先週から更新再開したカノゴクですが、第22話の進捗状況はそれなりといった感じでしょうか。ページ数にして10ページ程度。昔に比べるとかなりペースが遅いですけど、それでも自分なりにペースを上げて書いています。そして、少しでも面白いものが書けるようにと足りない知恵とアイデアを彫り絞って作っています。勿論、自分が楽しいということも忘れていませんが。
 とまあ、前置きはこれぐらいにして、そろそろ本編へ入らせてもらいます。先に言っておきますが、お世辞にも上手な内容とは言えません。それでも読んでくれると非常に有難いです。
 それでは、今回のカノゴクをどうぞ。

第21話 帰郷(2)

「どぼーんにゃ!!」
 シャンプーまみれだった頭を洗い流し、湯船に飛び込むミミ。その顔は、ご満悦そのものだ。
「今日は特段と暑かったから、いつもより気持ちいいね」
「そうだな。ヴァルフォクスの炎天下で10日連続強行ほどではないが、肌を照りつけるような暑さだった」
「ヴァルフォクス? デュタさんは、どこか暑いところに住んでいたの?」
「ま、まあ、そんなところだ」
 うっかり、昔のことを話してしまった。私が宇宙人、アル・ビシニアンであることがバレてはいけないのに。猛省だ。
「でも、ごめんね。こんなに狭い浴室に私も入っちゃって」
「我々は問題ない。それに話したいこともあってな」
「もしかして、私の両親のこと?」
「そうだ、それが気がかりでな。どうして、大和は両親と仲が悪いんだ? 大切な家族じゃないか」
 私には両親というものはよく分からない。両親は私を産み出してくれた日に戦争で亡くなっているからだ。ミミは父親こそいれど、その父親のことを酷く嫌悪している。だから、子を持つ両親という感覚が今一つ理解できない。
 それでも大和は私のように両親がいないわけでも、ミミのように片親でロクデナシではない。大切な両親がいるからこそ、どうしてこうなったのかが気になるのだ。
「まあ、反抗期みたいなものかな?」
「反抗期?」
「親っていうのは、何かとつけて子に指示したいものなのよ。あれをああしなさい、こうしなさいって」
「それは子供のことを心配しているからでは?」
「まあ、そうなんだけどね。でも、それが鬱陶しく感じることもあるのよ。兄貴はそれが嫌になったから、家から出たのよ」
 親のことが嫌になる。だが、ミミの父親とは大分事情が違うようだ。
 あの男は、少なくともミミのことを考えていない。あのような悪魔の所業を行うとする男が父親などであってたまるか。だから、私は地球(セラン)に逃げたのだから。
「デュタさん、難しい顔をしているよ。何か考えていたの?」
「大和も色々と悩みを抱えているようだな」
「悩み? あんなの悩みじゃないって。なーんにも考えずに東雲学園に受験して、たまたま合格しただけよ。まあ、勉強はある程度やっているようだけど、それでも将来のことを考えていない時点でダメダメ」
「私には、大和はなかなかできる男だと思っていたが……」
「当たり前だって。寧ろ、兄貴があまちゃんなのよ」
 元から厳しい意見の多い歩美だったが、私の思っている以上に辛辣な評価だった。これを大和が聞いていたら、どんな感想を漏らすのだろうか? きっと落胆しているかもしれない。
「そういうことだったのか、わざわざプライベートなことを話してくれてありがとう」
「ううん、兄貴のことを知っていたほうが、デュタさんも何かと動きやすいと思ってね」
 私はシャンプーを洗い流し、髪の毛を手でほぐした。シトラスシャンプーのほのかな香りが、とても心地がいい。
「じゃあ、デュタさんが質問をしたから、今度は私が質問してもいいかな?」
「ああ、何でも構わないぞ」
 とはいえ、我々の極秘事項(トップシークレット)についての質問をされると、間違いなく困る。大和からも他言無用と釘を刺されている。先ほどのような過去の話も勿論。
 でも、しっかり者の大和の妹ならば、きっと秘密にしてくれるだろう。それならば……。
 しかし、私の予想していたものとは違った質問が飛んできた。
「デュタさんのそのおっぱい、どうやったらこんなに大きくなるんですか?」
「えっ?」
 まさかそんな質問が飛んでくるとは。私の予想外の質問だった。
「羨ましいですよ~、妬いちゃいますよ~、こんなにおっきくて形も綺麗なおっぱい。私なんて、こんなに小さいんですよ」
 歩美は自分自身の胸をどこか物足りなげに触った。
 私には分からなかった。どうして、こんなに立派な体があるというのに、胸の大きさを気にするなんて。それは歩美に限らず、他の地球(セラン)の女性の何割かが悩みを抱えている。我々、アル・ビシニアンにはとても不思議な悩みだ。
「よく私には分からないことなのだが……」
「何言っているんですかあ~、この弾力だって」
「きゃっ!?」
 突然、私の両胸を鷲掴みにした。
「それそれ!!」
「や、止めてくれっ!! くすぐったい!!」
 歩美の両手を抑えようとしたが、何故だか力が入らなかった。私の胸を強く触れられているからだろうか? 地球(セラン)人にそんな秘められた力があったとは。
「でもね、デュタさんももう少し女の子であることを意識したほうがいいと思うよ」
「それはどういうことなのか? 私は女だぞ」
「そういう意味じゃなくて、もう少し女の子らしさを意識するっていうことだよ」
「女の子、らしさ……?」
「男勝りなデュタさんも嫌いじゃないよ。でも、年相応の女の子であることも必要だよ」
 年相応の女の子、それはそらや妙のようなことなのだろうか?
 でも、それがどういうことなのか具体的には分からない。どこが私に女の子として足りないのか、どうしたらそれが得られるのかを。
「例えば、服装を気にするとか」
「服装がいけないのか?」
「うん。今日のデュタさんの格好はTシャツにジーンズだけど、これじゃあ全然女の子らしくないし、色気もないよ」
 色気というものはどういうもの分からないが、それが女の子を形成するのに必要な要素のようだ。
「後は仕草とかもね。髪をさりげなく触るとか、胸の谷間が見えるように前屈みになるとか」
 歩美は自分自身の胸を両手で寄せるように前屈みになった。どこか苦しそうに見えた。
「それをしたらどうなるんだ?」
「兄貴が好きになってくれると思うよ。きっと女の子らしくなったら、兄貴もイチコロだよ」
「大和が私のことを好きになってくれる……」
 確かに大和は私を居候させてくれるぐらいには信頼していくれているし、優しくしてくれる。しかし、それは好きとは別の感情なのだろうか?
「とにかく、明日は私が手取り足取り教えてあげるよ。デュタさんの夏休みの目標は、女子力向上に決まりね!!」
「うにゃー!!」
 女子力というのは何のことかは分からないが、歩美の特訓を受けることが決まった。これできっと大和も、私のことを親友としてもっと好きになってくれるかもしれない。


 深夜1時を過ぎたというのに、なかなか眠れなかった。
 久しぶりに帰省したものあるけど、それ以上に大和くんが実家に戻ってくれたことが嬉しかったからだ。
 実家に戻るのも嫌々だった大和くんが、こうやって地元に帰ってくれた。お母さんとお父さんとのわだかまりが解消するのかは分からないけど、それでも戻ったということは大和くん本人もどうにかしたいと思っているはず。
 それに、大和くんと一緒に帰省できたのがとても嬉しい。東雲町だと何かと気を遣わないといけないことが多かったけど、地元ならそれを気にしなくてもいい。私と大和くん、距離を縮める最大のチャンスだ。
「大和くんとどこに行こうかなあ~。ゆっくり地元で遊ぶのもいいし、どこかちょっとした旅行なんかもいいなあ。あっ、星空を観に行くなんてのもロマンチックでとてもいいかもしれない」
 次々と思い浮かぶ大和くんとのデートプラン。それを考えているだけでも、興奮して眠れない。
 でも、困ったことが一つある。
 デュタさんとミミちゃんがいること。
 二人を橘町に残すなんて可哀相なことはできなかった。それでも大和くんと二人っきりでいられる時間が、かなり限られてしまう。下手をすると、そんな時間が全くないかもしれない。
 もし、デュタちゃんに出し抜かれることなんてあったら……。
「どうしたら、大和くんと二人っきりになれるのかなあ?」
『……セバイイ……』
「うっ!?」
 突然、謎のノイズ音とともに頭蓋骨を万力で押し潰されるような激痛に襲われた。
『ジャ……ベテ……イイ……』
「うううう……!?」
 私は頭を両手で頭を抱え、芋虫のように丸まる。
 動けない、喋れない、息をするのも辛い。
 頭痛が全てを圧倒する。このままだと激痛のあまりに、発狂するかショック死しそうだ。
 しかし、それは杞憂に終わった。
 謎の頭痛とノイズ音に襲われてから3分、徐々に弱くなりはじめてきた。
 息は整い始め、脈拍も少しずつ正常値に回復し、体が徐々に自由になっていく。
 そして。
「はぁー、はぁーっ」
 私は老人のようにゆっくりと体を起こした。
 痛みは嘘のようになくなっていたが、体中が汗でびっしょりだった。
 私の勘違いではない、間違いなく頭痛とあのノイズ音が聞こえたのだ。
「私、どうしちゃったのかなあ……?」
 実はこの頭痛とノイズ音、これが初めてではない。これで4度目だ。
 始めてこの現象に襲われたのは2週間前。その時は、痛さのあまりに涙すら溢れるほどだった。今では痛みにだいぶ慣れたから我慢できているけど、それでも痛いものは痛い。病院にも行ってレントゲン検診なども行ったけど、結局はどこにも悪いところはなかった。メンタル的なものが原因とはお医者さんが言っていたけど……。
「汗で体がびっしょりになっちゃった……。またお風呂に入らないと……」
 きっとあの日の出来事がトラウマで、頭痛を引き起こしているのかもしれない。
 早く忘れて、大和くんに元気な姿を見せないと。そうしないと、大和くんが心配しちゃう。

 どうでしたか、今回のカノゴクは?
 次回は特に予定がない限りは、いつも通り日曜日更新。それぞれ考え事のある中、大和はこの帰省で何か得ることがあるのだろうか?それは見てのお楽しみにということで。