では 今一度国民の声をその耳で 聞いてこいっ!――アーノルド・ジルベスター
ロボットは男のロマンだと思う蔵間マリコです。
ちょっと遅れましたけど、最新刊もしっかりきっかり買いましたよー。ロボットアニメの金字塔、機動戦士ガンダムシリーズの長谷川裕一さんの大人気コミック『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST』(以下、クロボンDUST)の最新コミックス5巻を。
通巻27巻目となるクロスボーン・ガンダムシリーズですが、最新刊も納得の出来。フォントとアーノルド、アッシュとニコル。お互い全く別の場所にいながらもリンクし、物語が動き出す。それを阻もうとする個性的なMSやMAの数々との対峙。それに加えて、長谷川裕一ならではの世界観や台詞回しが炸裂し、面白いのなんの。
特に5巻で印象的だったのが、キュクロープスのアーノルド・ジルベスター。4巻までは、酷薄だが肝心なところで仕留めることの出来ない悪役として描かれていたけど、最新刊では彼が力や性急な手段を求める理由や意外な一面が描かれている。今まではいけ好かないキャラだったが、5巻で随分と深みのあるキャラになった気がする。ただ、このままアーノルドが今までのやり方を突き詰めていたら、間違いなく破滅が待ち構えているだろう。彼はどこでそれに気付き、どう変わるか。そこが楽しみなところだ。
とまあ、大満足なクロボンDUST5巻だったけど、改めてクロボンDUSTの世界観は素晴らしいと実感させられる。
機動戦士クロスボーン・ガンダムゴーストまでのクロスボーン・ガンダムは外伝の色合いが強い作品だった。機動戦士クロスボーン・ガンダムは機動戦士ガンダムF91の間接的な続編であり、クロボンゴーストは機動戦士Vガンダムの裏側で起きた出来事として描かれていた。まあ、スカルハートと鋼鉄の7人もあるけど、それはちょっと別に置いておこう。
それに対して、クロボンDUSTはG-SAVIOURとのミッシングリンク、宇宙戦国時代を描いた作品だが、これが作品の強みになっている。基本、宇宙世紀のガンダムの外伝作品は一年戦争からシャアの反乱よりも少し後の時代が多いけど、宇宙戦国時代を舞台とした作品は皆無。だから、好きなように作品を描くことができる。特に長谷川裕一先生の個性的な作風とは、相性が抜群だ。
小競り合いに次ぐ小競り合いで、ただただ衰退していく人類。北斗の拳よろしく野盗どもがミキンシング・ビルドのMSを駆り、民衆たちを脅かす。あるいは民衆を暴力や宗教で支配し、小国家を形成する。秩序なんてない、あるのは混沌と滅びへの道だ。
しかし、そんな滅びに向かいつつある世界でも必死に抗おうとする人間も少なくとも存在する。アッシュ・キングを社長とする無敵運送や戦う穀物王ことタガナス・タヤカ、そして地球連邦軍に身を置いたフォント・ボー。やり方こそはバラバラだが、世界を滅ぼさないためにも、少しでも明日を良くするためにと四苦八苦しながらも前進している。そんなエネルギッシュな姿が、退廃的で斜陽な世界で光り輝いている。
これからこの先、どんな展開が待っているのかは予想がつかないし、困難や悲劇が待ち構えているかもしれない。それでも試練を乗り越えて、人類の歴史を紡いでほしいものだ。
未開拓の時代だからこその面白さがあるクロスボーン・ガンダム DUST。
四半世紀近く連載の続くシリーズだけど、こうも面白さが色褪せないのは奇跡的だ。今から単行本を揃えるとなると結構大変だろうけど、ガンダム好きなら是非読んでほしい。きっと、長谷川裕一さんの描くガンダムの世界の魅力に惹かれるかもしれない。
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