色々な視点で楽しむのも一興。

 たんの漫画を徹底的に楽しみたい蔵間マリコです。
 やっぱり辛いですねえ、パラレルパラダイスが掲載されていない週は。まあ、1ヶ月に1回は休載があるのはいつものことですけど、それでも読めないというのは辛い。その上、来週のヤンマガは合併号。休載とタイミングが被っていたら良かったんですけど、まさかの2週連続の飛び石ですからねえ。これは死活問題ですよ。早くたんの漫画が読みたい!!
 というわけで、今日は岡本倫成分を補給するため、パラレルパラダイスに登場する武器の元ネタについてでも色々と語らせてもらいます。今回で3回目となるこのコーナー、生物の元ネタ同様にたんの作品に対する造詣の深さが窺えますねえ。SFについては勿論のこと、こういうファンタジーよりのものにもしっかりと調べているあたりがなんとも好感を持てるというか。そして、それを調べることで読者としてよりいっそう楽しませてもらいます。やはり、楽しむなら徹底的に楽しまないとね。
 勿論、ネタバレや岡本倫先生の独特の作風、管理人の独断と偏見が入りまくりです。ですので、そういうのが嫌だという人はここまで。別に大丈夫という人はどうぞ。

 ○鯨・ボルグ

 ピナコが使う巨大なハンマー。
 最近、某ゲームで有名になっているので知っている人も多いかもしれないが、元ネタはアイルランドのケルト神話に登場する半人半神の英雄、クー・フーリンの使う槍、ゲイ・ボルグ。そこから言葉遊びとして名付けられたのだろう。
 ゲイ・ボルグの生まれは紅海の洋上でコンヘインとクリードの2匹の海獣が争い、その戦いの末にクリードは敗死し、流れ着いた死体の頭骨を槍としてこしらえたそうだ。それをスカアハが弟子であるクー・フーリンに授けた。武器の特徴としては普段は銛の形をしているが、投げると30の鏃となり、突けば30の棘となって襲い掛かってくる。そして、それらは例外なく敵に命中し、どんな防具も貫通するという恐るべき能力を持つ。これにより、多くの戦士を殺している。中には肛門を貫かれて死んだ者もいるそうだ。
 元ネタは槍だけど、共通点が幾つかあるのが面白い。ハンマー自体が巨大鯨の骨を使っていることや海を連想させる点。後者はちょっと苦しい解釈かもしれないが、個人的にはなかなかと面白いアレンジである。

 ○鳳凰

 バニーユの使う2丁拳銃。
 鳳凰は中国由来の霊鳥であり、それにまつわるものはアジア地方に多く存在する。中国の神話においては、360種類の動物の長であり、聖天子の治める平和な世に現れるとされている。そして、鳳凰が飛べば他の鳥も飛び、鳳凰が死んだ時は多くの鳥が泣くとされる生命のカリスマ(特に鳥類)である。古代中国では麒麟・霊亀・応龍とともに、四霊として扱われていたそうだ。
 さて、鳳凰が時々、朱雀やフェニックスと同一視されることがある。これは万物は木・火・土・金・水の5種類の元素によって成る五行思想が流行った際、四聖獣である朱雀が火を司るところから鳳凰を同じものとして扱うというのがあったそうだ。その関係で火を司るフェニックスも、鳳凰も同じような扱いを受けているようだ。
 ちなみに鳳凰の鳳は雄、凰は雌を指す。つがいで鳳凰、二丁拳銃で鳳凰。中二病的なコンセプトがたまらない。

 ○クルエールペイン

 エルザの得物である大鎌。
 クルエール(cruel)は残酷、むごい、残虐な、無慈悲な、非情なという意味があり、ペイン(pain)は痛みを意味する。即ち、残酷な痛みであろうか。
 これについては特に元ネタというものは見つからない。あるとすれば、モンスターハンターシリーズに登場する大刀だろうか?こちらについてはイビルジョーというモンスターの素材から作る武器であり、なかなか性能だそうだ。上位種にカラミティ(calamity、災厄の意味)ペインなるものがある模様。
 ところで大鎌は創作物で武器として使われることが多いが、実際の鎌は武器としての評価はよろしくない。武器としての動きがあまりにも大振りすぎるし、なによりも重たい。まあ、そういうことをいうとロマンもヘッタクレもないからそこは気にしないで。
 そして、死神が鎌を持っているのは収穫者、ハーベスターとして側面があるからだ。麦の実りを刈り取る、それは魂を収穫することになる。いかにもヨーロッパらしい価値観である。

 様々な観点から見て面白いパラレルパラダイス
 またいつかの機会に武器の元ネタを色々と調べてみたい。きっとパラレルパラダイスを楽しむにおいて、より深く楽しめるかもしれない。