いろんな角度から楽しむのも、魅力の一つ。

 たんの漫画を徹底的に楽しみたい蔵間マリコです。
 皆さん、今週のパラレルパラダイスを読みましたかー?いや~、いつもとは違ったベクトルで非常に強烈な内容でしたねえ。なんていうか、岡本倫先生の別の顔が見えた気がします。普段のエロエロでアヘ顔な女の子たちもいいけど、そんなとは全く違った顔もなかなか面白い。ホント、たんの才能は底知れませんわ。
 とまあ、目の見張るものがあった今週のパラレルパラダイスですが、今回はちょっと小ネタ的なものを語らせてもらいます。物語のちょっとした設定の部分から、岡本倫先生の漫画以外のことまでの話をね。
 当然ながら、ネタバレや岡本倫先生の独特の作風、管理人の独断と偏見が入りまくりです。ですので、そういうのが嫌だという人はここまで。別に大丈夫という人はどうぞ。 

 今週のお題は『不老不死・不老長寿』。元・グランドスールのミミが、人間を食べ続けて魔女になるという妄執の源がテーマです。
 パラレルパラダイスの世界というと、言うまでもなく20歳で崩月して亡くなるという非常に短命なものとして描かれている。故にそれが当たり前のように生きている者もいれば、メイみたいに崩月することを恐れるものもいれば、今週のパラレルパラダイスのミミみたいになりふり構わないものもいるだろう。
 その一方で、何百年何千年も生きている者もいる。エルフやネレイドといった亜人種や、魔女のような元人間がそうだ。前者については、元々人間とは成り立ちが全く違う存在であるからそもそも価値観が違う(多分、人工的に造られた種族だと思うが)。人間の1年間は亜人種にとっては1ヶ月程度のもの、亜人種からすれば人間は敵対する必要はないけど、必要以上に有効である必要もない。ルーミが言っていた、エルフからすれば人間は虫みたいなものというのが的確であろう。
 その一方で、後者の元人間である魔女は興味深いものがある。3000年前の男と交尾して不老不死になったわけだが、それを果たした当時の魔女たちの心境というのはどういうものだったろうか?人類最大の欲望が叶ったはいいものの、寿命や崩月で先立たれる者たちを見て孤独感や狂気に苛まれることとかはなかったのだろうか?あるいは、それすらも忘れてしまったのだろうか?少なくとも、今まで登場してきた魔女たちの反応を見ると千差万別かもしれない。滅びる寸前まで生にしがみ付いていたカイ、様々なものを忘れ続けて生きていたガリア、そして人を食べることを止めて為すがままの隠遁生活をしているサーニャ。ミミが魔女になったとしたら、カイみたいにひたすら生にしがみついていたかもしれない。
 さて、パラレルパラダイスの不老不死・不老長寿のことを語ったが、岡本倫先生の作品に不老不死と言えば、他にもいる。極黒のブリュンヒルデの鷹鳥小鳥のグラーネが孵卵したもの、女神イズンがそれだ。覚醒すると人類が滅亡するということで作中では彼女の命と引き換えに防いだが、もし覚醒した場合は鷹鳥小鳥はどうなっていたのだろうか?ショックのあまり自殺を図ろうとするだろうけど、多分イズンが自殺を許すとは思えない。そうなると修復しようのない壊れた心のままで永遠と無人の荒野を彷徨う存在になっていたかもしれない。
 とまあ、こんな感じで岡本倫先生の作品では不老不死・不老長寿が取り扱われているわけだが、個人的に不老不死をテーマとすると、漫画の神様である手塚治虫作の『火の鳥』の未来編が印象的かな?最終戦争で人類が滅んだ地球に残された主人公が、クソ鳥火の鳥との契約で永遠の命という罪を背負うことになる。例え肉体が滅びても、意識はそのままで新たな生命が生まれ、そしてそれが滅んでも意識だけが残り……。あれを見て、不老不死はとてもいいものではないと思ったな。まあ、200年ぐらい元気に生きたいという欲はあるけどさ。

 短命と長命が入り乱れる世界のパラレルパラダイス
 さて、魔女の長命の謎は明らかになるのだろうか?ミミが魔女の話にも触れていたし、そろそろその謎の答えが出てくるかもしれない。